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長い待ち時間で帰ってしまう人も!病院の待ち時間の原因と対策

                   
投稿日: 2024.01.16
更新日:2024.03.06
                   

病院の最大の課題とも言えるのが待ち時間です。待ち時間が長いと、患者さんは病院に不満を感じたり、その後の予定のために受診をあきらめてしまったりする場合があります。それは、病院の経営状態はもちろん、患者さんの健康状態にも影響します。病院の経営において、丁寧な診療を行うことだけでなく、待ち時間対策にもしっかりと目を向けることが重要なのです。本記事では、待ち時間が発生する理由から、待ち時間への対策、待ち時間の分析結果をまとめたデータまで、詳しく説明します。

病院で長い待ち時間はなぜ発生する?

病院の待ち時間が長くなりがちな理由として一番に挙げられるのは、診療を行う医師や患者さんの人数によって、医師一人あたりが診療できる時間に限りがあるということです。そのほかにも、院内の業務体制や診療している場所などが理由で、混雑してしまうこともあります。このように待ち時間が発生してしまう理由はいくつかありますので、下記でさらに詳しく説明します。

患者数が多い、一人ひとり丁寧な対応、急患の対応をしているため

受診する患者さんが多くなればなるほど、必然的に待ち時間は増えます。厚生労働省のデータによると、一人あたりの診察時間の平均は3〜9分とされています。仮に10人の患者さんが院内に待機していたとすると、30分から1時半ほどの待ち時間が発生することになります。また、診察時間が患者さんによって変わることもあります。それは、薬の処方のみの方もいれば、病気や治療内容について詳しい説明が必要な方もいるからです。加えて、疾患や外傷によっては、診察・薬の処方以外に、検査や点滴、外科的処置などが必要になる場合もあります。さらに急患の患者さんが来院された場合、診療の順番が前後することも想定しておかなくてはなりません。しかし、何かしらの症状を抱えながら、診察や会計までの時間を待つことは、患者さんにかなりのストレスを与えてしまいます。もし、待ち時間が長引く場合は、あらかじめ患者さんに、診察時間が遅れてしまう理由と、診察の開始時間の目安を伝えておくとよいでしょう。

受付や予約システムなど業務効率化ツールを入れてないため

予約システムを取り入れていない医療機関の場合、その日に来院する患者さんの人数を把握できないため、混雑状況に備えた動きができません。患者さん側からしても、混雑している時間帯や空いている時間帯がわからないので、空いている時間に合わせてクリニックに出向くこともできず、待合室が混みあってしまいます。また、初診の方の場合は、問診票の入力、健康保険証の確認、カルテ作成などで、受付業務に時間を要してしまうことがあります。さらに、カルテが紙の場合は、探すのに手間がかかり、担当が別の医師であれば内容を理解するのに時間がかかります。医院全体で、いつ、どんな病気を抱えている患者さんが来院するのかを見える化できれば、待ち時間を短縮しやすくなります。業務効率化ツールを導入することで、医師はもちろん、看護師やスタッフの業務も軽減できるため、スムーズな体制で医療サービスを提供できます。

地域によって医療機関の数が異なるため

厚生労働省のデータによると、全国の医療機関の数は約11万とされています。一見、多い数に見えますが、お住まいの地域によっては人口に対して医療機関が少ない場合があります。病院の病床数が不足している順位を見ると、1位が神奈川県、2位が埼玉県、3位が東京都と、関東地域の割合が高いことがデータに表れています。最上位の県と最下位の県を比較すると、10万人の人口に対して、病床数は3倍、病院数は約5倍という差があります。こうしたことが理由で、地域によって混雑状況は異なります。病院によっては、対応している診療科がないケースもありますので、患者さんが地元から少し離れた病院にも通うことも珍しくありません。

薬を受け取るにもなぜ待ち時間が発生?

薬を受け取るにもなぜ待ち時間が発生?

病院での待ち時間を中心に説明しましたが、薬局でも待ち時間が長くなる傾向にあります。それは薬の渡し間違いや漏れが発生しないよう、慎重に業務を行っているからです。ここでは、処方箋の確認・薬の作用や飲み合わせのチェック、薬の準備について説明します。

処方箋の確認している

薬局が薬を処方するうえで、処方箋に必要事項が書かれていないと、調剤を行うことができません。処方箋には「患者の氏名・年齢」「処方箋の発行年月日」「病院の名称」「病院の住所」「医師の記名・押印」「医薬品名」「分量・用法・用量」「保険証番号」が明記されています。一つでも記載漏れがあると、処方箋の再発行が必要になります。また、いつもと処方する薬が変わったなどの理由で確認事項があれば、薬剤師が医療機関へ問い合わせを行います。このように情報の確認を行うため、処方の準備に入るまでに時間を要することがあります。

薬の内容や飲み合わせなどを確認している

薬には副作用があるため、用量や飲み合わせが間違っていると、体調を悪化させてしまう危険性があります。そのため、「医薬品名が重複していないか」「服用の時間が間違っていないか」「患者さんの年齢に対して、薬の用量があっているか」などの点に注意して、処方箋の確認が行われます。また、持病がある患者さんに薬を処方する際は飲み合わせにも問題がないかを確認します。例えば、緑内障の患者さんがステロイド剤を服用すると眼圧の上昇を促進させてしまったり、インフルエンザにかかっている子どもがロキソニン錠を服用すると、インフルエンザ脳症の発症を招いたりするリスクがあります。禁忌薬が処方されている場合は、代用の薬がないかを確認するなど、細心の注意を払っています。

薬の準備している

処方箋の確認が済んでから、調剤が開始されます。薬には、錠剤、粉薬、シロップ剤などがあります。錠剤以外のものは決められたパッケージに入っていないので、年齢や健康状態に応じて、細かく量を調整する必要があります。また、調整を行った薬に異物が混入していないかなども確認する必要があり、慎重な作業が求められます。さらに、患者さんに薬を渡す際は「どんな症状で病院を受診したのか」「現在、抱えている持病はないか」「過去に薬を飲んだことで、アレルギー反応が現れたことがないか」などを確認し、一つひとつの薬に対しての作用や用量、注意点についても丁寧に伝える必要があります。

長い待ち時間をどう解決する?

待ち時間の原因からもわかるように、待ち時間の発生を完全にゼロにするのは不可能です。だからこそ、多少の待ち時間があっても、患者さんが退屈しない環境作りが重要になります。ここでは、おすすめの院内設備やITツールについて紹介します。

院内設備などで対応する

待ち時間が長いと、患者さんのストレスが蓄積されてしまいます。できる限り、院内で過ごす時間を退屈にさせないことが重要なポイントです。多くの医療機関では、診察や会計で待つ時間を有意義に過ごせるよう、テレビ・本・雑誌・ウォーターサーバーなどを設置しています。Wi-Fi環境が整備されていれば、友達や家族とメッセージのやり取りをしたり、動画を視聴したり、ゲームをしたりできるので、患者さんに喜ばれるでしょう。観葉植物や水槽、絵、写真などを飾ることも、リラックス効果を与えることにつながります。また、小児科や耳鼻咽喉科、皮膚科など、子どもが来院することの多い医療機関には、キッズスペースが用意されていることも多くあります。加えて、授乳室やおむつ交換台などがあると、お子さん連れの親御さんも通いやすいかと思います。なかには、保育士が常駐しているところもあります。親御さんにとっては、診察中に子どもの面倒を代わりに見てくれるため、ありがたいサービスと言えるでしょう。

ITツールなどシステムを導入する

初診、再診に関わらず、スムーズな診療を実現するためには、5つのITツールを駆使することが大切です。1つ目は、時間予約・順番受付システムを導入することです。医療機関側が患者数を把握できるのはもちろん、患者さん側も待ち状況を理解できるため、待合室が混みあうリスクを回避することができます。2つ目のWEB問診システムは、患者さんがネット上で問診票を入力することができるシステムです。医療機関側は事前に体調を知ることができ、当日の事務作業の手間を1つ省くことが可能です。3つ目は、電子カルテシステムです。紙のカルテは、保管するのが大変で、久しぶりに来院された患者さんのカルテを探すのに時間がかかります。電子カルテにすることで、瞬時に患者さんの情報をパソコンで確認することができます。4つ目の自動精算機では、スタッフが会計で対応する時間を減らすことが可能です。現金のほかに、クレジットカードや電子マネーも使えることが多いため、会計そのものにかかる時間の短縮にもつながります。最後の電話自動応答システムは、電話予約やインフルエンザに関する問い合わせを代わりに処理してくれます。ほかにも、スマートフォンやパソコンを使ったオンライン診療サービスの需要も増えていますので、導入を検討してみてもいいでしょう。

どれくらい待ち時間が発生している?

どれくらい待ち時間が発生している?

厚生労働省のデータや民間で調べたデータなどを参考に、診察までの待ち時間・初診と再診の待ち時間の差・待ち時間に対する満足度・診療科別の待ち時間・薬を受け取るまでの待ち時間について説明します。

診療までの待ち時間

診療までの待ち時間で多いのは、15分未満です。これは、大病院・中病院・小病院・特定機能病院・療養病床を有する病院のデータをもとに算出されています。全体の数字を見ると、1時間未満の医療機関が約7割を占めています。

初診と再診の待ち時間

初診の待ち時間は15〜30分未満の時間が多く、再診の待ち時間で多いのは15分未満です。1時間未満の割合は初診も再診も約7割と大差はありませんが、全体の待ち時間の状況を見ると、初診よりも再診の待ち時間の方が減少している傾向にあります。

診察までの待ち時間の満足度

満足度の調査では、診察までの待ち時間のほかに医師との対話、治療内容、スタッフの対応、プライバシー保護の対応、診察時間などの項目が設定されています。診察までの待ち時間の満足度をデータとして見ると、満足が33%、普通が41%、不満が24%です。平均待ち時間に対して、満足・普通と回答している割合が意外と多いことがわかるかと思います。しかし、医師との対話やスタッフの対応と比べると、傾向として待ち時間に不満を感じている方が多くいる点は注意しなくてはなりません。

診療科別の待ち時間

診療科によって待ち時間は異なります。「内科1時間23分」「外科1時間45分」「産婦人科55分」「眼科14分」「小児科26分」「整形外科35分」「皮膚科56分」「泌尿器科1時間13分」となっており、全科の平均がおよそ1時間です。

薬を受け取るまでの待ち時間

薬局の業務は、医師から指示された薬を処方するだけではありません。「処方箋の必要事項が漏れなく記載されているか」「薬の内容は適正か」「飲み合わせの問題や禁忌薬はないか」「年齢に合わせた用量になっているか」「異物混入はないか」など、薬を出すためにはいくつもの確認事項があります。そのため、待ち人数が少ない場合でも、薬を受け取るのにはそれなりの時間がかかってしまうのです。また、仕事帰りや学校帰りで来院する人が多くなる夕方から夜にかけては、特に混みやすい時間となっています。そのため、処方する薬の量や種類が多い場合や、待ち人数が多い場合は待ち時間もさらに長くなってしまいます。

まとめ

データを見ると、待ち時間が長くても、不満に感じている方の割合がそこまで多くはないということが理解できたかと思います。病院の待ち時間に対する患者さんの理解もあると思いますが、院内環境の整備であったりITツールの導入であったりと、ストレスを感じさせない体制作りが大切です。また、受診しやすい体制が整えば、定期的に通院することに対して煩わしさを感じにくくなるため、結果的に患者さんの健康寿命を延ばすことにもつながります。今後、病院を新しく開業する方や病院の経営を引き継ぐ方の参考になったら幸いです。