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医療事務は辞める人が多い?辞めてしまう理由や続けてもらう方法を解説

                   
投稿日: 2024.01.17
更新日:2024.04.02
                   

医療事務は人気の職種の一つであり、「医療事務管理士」や「医療事務技能審査試験」「診療報酬請求事務能力認定試験」「医療事務認定実務者」といった医療事務に関連する資格は、とりたい資格ランキングの上位に並ぶこともめずらしくありません。

しかし、そんな人気の医療事務は、辞める人が多い職種でもあるのです。この記事では、本当に医療事務は辞める人が多いのか、医療機関側は離職率を下げるためにどのような対策をとればいいのかをご紹介します。

医療事務の離職率は本当に高い?

医療事務の離職率は本当に高い?まずは、医療事務という職種はどのような仕事内容なのか、本当に辞める人が多いのかをご説明します。

実際の医療事務の離職率はどれくらい?
医療・福祉関連の離職率は、高卒で50%弱、大卒で40%弱となっています。医療事務という職種単体での離職率は正確なデータとしては出ていませんが、医療業界全体として、離職率が高いことがうかがえます。産業別にみると、宿泊業・飲食業が1位、教育・学習支援業が2位、生活関連業が3位となっており、医療・福祉はそれに続く第4位です。

これらの離職率は、就職後3年以内に離職した人の数をもとに算出されているため、高卒ではおよそ半数の人が3年以内に医療・福祉業を離職しているということが分かります。

医療事務の仕事の内容は?
医療事務とは、医療機関で必要となる事務作業、そしてその業務に従事する人のことを指します。実際の業務としては「受付・会計業務」「クラーク業務」「レセプト業務」の主に3つに分けられます。

受付・会計業務で行うのは、受診した患者さんの受付対応や初診患者さんのカルテの作成、支払業務などです。クラークという言葉が「事務員」という意味であることからも分かるように、クラーク業務は外来診療や入院診療における全般的な事務業務を指します。

具体的には、受付業務や電話対応、検査データや治療データの入力・管理などが含まれます。レセプトとは診療報酬明細書のことであり、レセプト業務はレセプトの作成や診療費用の請求などを行うことです。専門的な知識や作業の正確性が必要となります。

医療事務を簡単に辞めてしまう理由は?
医療事務の離職率が高い理由はさまざまです。よくある理由としては、「職場の人間関係が合わない」「業務量が多く、休みがとりづらい」「クレームが多く、精神的な負担が大きい」「業務量や難易度に対して、給料が安い」などが挙げられます。もちろん、人によって感じ方はさまざまですし、業務内容とは全く別の理由で離職せざるを得なかったという場合もあるでしょう。

しかし、実際に離職率は高く、医療従事者の人手不足は現実的な問題としてありますので、「業務量が多い」「それに対して給料が安い」といった理由は、想像に難くないことだと考えられます。

医療事務の離職率はなぜ高い?

ではここからは、医療事務の離職率が高い理由について、一つひとつを深堀りしていきましょう。

職場の人間関係がつらいから?
職場の人間関係が合わずにつらいというのは、医療事務の離職率を上げる理由の一つとなっています。そして、それにはいくつかの原因があります。まずは業務の忙しさです。前述したように、医療業界は人材が不足しており、医療従事者一人ひとりにのしかかる業務量は多くなりがちです。

そのため、十分な教育時間やフォローをする時間、コミュニケーションをとる時間をとることができないという状況が生まれがちなのです。

また、医療機関の中には親族経営を行っているクリニックや病院もあります。そのような場合、親族のほうが優遇されていたり、親族に関することは意見をいっても聞いてもらえなかったりということが起こり得ます。
そういった環境が合わずに、辞めてしまうということもめずらしくありません。そして、医療事務という職種が、医師や看護師から軽く扱われがちという問題も少なからず存在します。

どのような職場で働いていても人間関係の問題は起こる可能性がありますが、特に医療機関では、上記のような状況から人間関係のトラブルが起こりやすいといえるでしょう。

業務量が多く忙しすぎるから?
医療事務として働いてみて、思った以上の業務量に驚くという方は少なくありません。仕事内容の項目で前述したように、医療事務という仕事には、受付・会計業務やクラーク業務、レセプト業務などが含まれており、規模の大きい病院であれば分業制になっている場合もありますが、小さい規模のクリニックではそのすべてを少人数でこなす必要があります。

また、分業制で行っている規模の大きい病院の場合も、その分患者数が多いため、業務量が少なくなるわけではありません。専門的な知識を身に付ける必要もあり、作業には正確性が求められることから、残業時間は多くなりがちです。

特に月初のレセプト作成期間は、残業時間が大幅に伸び、休みもとれないということが少なくない状態となっています。

クレームが多すぎるから?
医療事務は、患者さんと接することの多い仕事です。
そのため、自身が行った事務作業に対するクレームはもちろん、医療機関全体へのクレームも、受ける可能性があります。特に医療機関では、患者さんやそのご家族もナーバスな状態になっていることが多く、ちょっとしたミスや不用意な発言が、大きなクレームにつながってしまうことも少なくありません。自身に非がなくてもそういった対応をしなければならない状況が続くと、「辞めたい」という気持ちが高まってしまうと考えられます。
給料が低いから?
医療事務の年収は、全産業の平均年収よりも下回る額となっています。医療機関の規模などにもよりますが、平均としては300万円前後となっており、一人で生活をするために十分な額であるとはいえません。また、業務量が多く、クレーム対応などが必要になる環境であるにもかかわらず給料が低いという現状も、待遇に不満を持つ原因となっています。

どうすれば医療事務の離職を防げる?

どうすれば医療事務の離職を防げる?ここまで医療事務の離職率の高さやその原因を説明してきました。しかし、医療事務は医療機関にとってなくてはならない職業です。では、どのようにすれば医療事務として働く方々の離職を防げるのでしょうか。

人間関係を改善するには?
クリニック内の人間関係をよくするためには、まずは院長自らがスタッフと積極的にコミュニケーションをとることが大切です。会話をする機会を増やし、ささいなことも言いやすい関係性を心がけることで、何かトラブルがあった際にも早期に対応でき、離職に至る前に問題を解決しやすくなるでしょう。
業務量を減らすには?
忙しさや休みのとりにくさが離職率の高さの原因となっている場合には、スタッフを増やすなどして一人当たりの業務量を減らすことが大切です。診療科によっては繁忙期がある場合もありますので、繁忙期にはアルバイトスタッフを雇うなどの対策をとりましょう。その分人件費はかかりますが、優秀な人材が離職し、その分を埋めるためにかかる採用費用や教育にかかるリソースなどを考えれば、アルバイトを雇ったほうが安くすむとも考えられるでしょう。
院内の環境を変えて働きやすくするには?
院内のレイアウトを工夫して医療事務スタッフが作業に専念できる環境を作ったり、効率的に働けるよう動線を整えたりしてみましょう。少しの工夫で、働きやすさが大きく変わることがあります。また、給与体系を見直したり、勤務時間を調整したりといった工夫をすることも大切です。

編集部まとめ

辞める人が多い医療事務という職種について、その仕事内容や辞めてしまう理由、辞めてしまわないようにできる工夫をご紹介しました。スタッフが無理なく長く働ける環境作りをすることは、スタッフ側にとってはもちろん、経営者側にとってもメリットとなります。ぜひ参考になさってください。