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開業医の年収はいくらぐらい?診療科目別や開業エリア別に詳しく解説!

                   
投稿日: 2024.01.20
更新日:2024.03.06
                   

病院やクリニックなどで医師として働きながら「独立したい」「いつかは自分のクリニックを持ちたい」と考えている方もいらっしゃるでしょう。

また、独立を目指すにあたって、開業医の年収はどれくらいなのか、年齢や地域によって年収に差はあるのか、開業にはどれくらいの資金が必要なのかなど、金銭面での疑問や悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、勤務医との違いを押さえたうえで、開業医のメリット・デメリットや平均年収などについて紹介していきます。記事後半には年収をアップさせるためのポイントや儲からない開業医の特徴などもまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。

開業医とは

開業医とは

「開業医」とは、個人でクリニックや病院を開業した医師のことを指します。呼吸器内科や循環器内科といった内科分野をはじめ、脳神経外科、整形外科、美容外科、形成外科といった外科分野、小児科、泌尿器科、皮膚科などあらゆる診療科目で開業することができます。

開業する医師本人が特化している分野の科目を掲げる場合もあれば、地域のニーズに合わせて診療科目を選択するという医師の方もいらっしゃいます。

どちらにしても、独立を考えている場合は、その地域に求められていることや競合クリニックなどを事前に調べておくことが大切です。

開業医と勤務医の違い

自ら開業から経営までを行う開業医に対して、クリニックや病院で雇用されて働く医師のことを「勤務医」と呼びます。

開業医は患者さんの診察や治療に加えて、クリニック・病院の経営を行わなければなりません。また、患者数によって日や月ごとに売り上げが変わり、それによって収入も変動します。

一方で、勤務医は経営には直接携わることはなく、診察や治療などの現場対応がメインとなります。売り上げが収入などに与える影響も少なく、毎月安定した収入を得ることができます。

開業医のメリット

開業医のメリットとして第一に挙げられるのは「診療方針を自分で設定できる」という点です。
勤務医として働いていると、その医療機関の診療方針や理念に従わなければならず、自分の意思に反する治療や行動をしなければならないという場面もあるでしょう。

しかし、開業して院長になれば、クリニックとしてどう診療を進めていくのか、どのように患者さんと接するのかを自分で定め、理想の診療を提供することが可能になります。

また、クリニックに必要な人材を自分で採用するケースが増えるため、勤務医時代に人間関係で悩んでいた方や価値観の合う人と働きたいという方にとってはメリットが大きいかと思います。さらに、経営が軌道に乗り患者数が増えれば、勤務医時代よりも収入アップが期待できます。

開業医のデメリット

メリットがある一方で、デメリットももちろんあります。
例えば、開業医は患者さんの治療や診察だけでなく、経営者として銀行とのやりとりやスタッフのマネジメントなども行わなければなりません。患者数がなかなか伸びず売り上げの向上が見込めない場合、スタッフを雇うことができず、開業医自身の負担が大きくなってしまいます。

また、万が一医療事故などが発生した場合、経営者として責任を問われることになるというリスクがあります。

開業医の年収

「年収1億円も夢じゃない」と言われている開業医ですが、開業医になれば誰でも儲かるわけではありません。経営を行ううえでのポイントをしっかりと押さえることで、安定した収入を得ることができます。ここからは、開業医の平均年収を、診療科目や年齢別などに分けて紹介していきます。

開業医の平均年収

開業医の平均年収は約2800万円と言われています。勤務医の平均年収が約1500万円ですので、その約1.8倍になります。

ただ、税金の支払いや治療・経営にかかるコストを負担する必要があるため、この金額が手取りとして入るわけではありません。

また、集患や経営がうまくいっていない場合は2800万円を下回り、借金返済などに追われてしまう可能性があります。

科目別の開業医の平均年収

続いて、診療科目別に開業医の平均年収を紹介していきます。

まず、平均年収が最も高いのが小児科の3068万円です。育児をしている親御さんの多くは、お子さんに何らかの症状や異常が現れた場合、まずは小児科を受診するでしょう。
このようにニーズの多い診療科目で開業した場合は、ほかの科目よりも高い収入が見込めます。次に平均年収が高いのは整形外科で、2988万円となっています。骨折や捻挫といった整形外科疾患は、小さなお子さんから年配の方まで幅広い年代の方に発症する可能性があるため、こちらもニーズが高いと言えます。さらに、皮膚科は2709万円、精神科は2587万円、内科は2424万円、外科は1977万円、耳鼻咽喉科は1890万円、産婦人科は1834万円、眼科は1511万円が平均年収となっています。

より高い年収を得たいと考えているのであれば、これらのデータを参考にして開業してみても良いかもしれません。

年齢別の開業医の平均年収

勤務医の場合、年齢を重ねれば重ねるほど収入は高くなっていく傾向にありますが、開業医はそうではありません。

では、年齢によって何が異なるのかと言うと、「平均生涯年収」が異なるのです。平均生涯年収とはその名の通り、生涯で稼ぐことができる金額を表します。

例えば、30代で開業した場合、定年退職までは40年ほどとなり、長い期間開業医としての収入を得られるため、平均生涯年収は約11億円となります。

また、40代で開業した場合の平均生涯年収は約7億円、50代で開業した場合は約5億円です。40代・50代での開業は、勤務医時代に患者さんと信頼関係を築けていたり、多くの経験を積んでいたりすることで患者さんの獲得をしやすい傾向にあります。

ただ、開業時期が遅いと、銀行からの融資を返済する期間も短くなってしまうため、より経営を安定させて確実に返済を行っていく力が求められます。これらの平均生涯年収額はあくまでも目安ですので、「30歳を超えたら開業したい」「いつ開業するのがベストなんだろう」と悩んでいる方はぜひこのデータを参考にしてみてください。

地方の開業医について

同じ開業医でも、首都圏で働く人と地方で働く人とでは、年収やライバルとなるクリニック数・集患数などが異なります。具体的にどのような面で違いが生まれるのか、詳しく解説していきます。

地方の開業医と首都圏の開業医の違い

へき地や田舎では、診療を必要としている患者さんに対して医師の数が足りていないケースがほとんどです。そのため、限られた病院やクリニックに多くの患者さんが集まります。また、患者さんからの信頼度も、首都圏より地方のほうが高い傾向にあります。

地方の開業医の年収

集患数が多ければ年収が高くなることは皆さん理解できるでしょう。
実際、開業医の平均年収が約2800万円なのに対し、地方で開業した医師の平均年収は約3385万円となっており、500万ほどの差があることがわかっています。

一方、首都圏では、設備の整った大学病院があったり競合クリニックが多かったりすることで、うまく集患につながらずに廃業してしまうクリニックが多いのが現状です。

開業医の年収でよくある質問

開業医の年収でよくある質問

ここからは、開業医の年収に関して、よくある質問を紹介します。

開業医として年収を安定させるには?

まずは好条件の立地を探すことからはじめましょう。
どれだけ医師の技術が優れていたり新しい医療機器を備えたりしても、患者さんが来てくれなければ収入は得られません。診療科目に合わせてターゲットとなる患者さんが通院しやすいと思える場所を選ぶことが大切です。

また、業務効率化を追求することも、年収を安定させるためには重要です。バリアフリーを取り入れたり、オンライン予約システムなどを導入したりすることでスムーズに診療が進み、効率よく利益を得ることができます。

さらに、優秀な人材の獲得や育成にも力を入れましょう。クリニックの規模にもよりますが、医師1人で対応できる患者数には限度があります。
特に、開業医は診療以外の経営面などの業務もこなす必要があるため、その他スタッフのクリニック内でのチームワークが売り上げに大きく影響します。新人研修制度の導入や既存スタッフによるOJTを実施することを検討してみてください。

クリニック開業にかかる初期コストは?

診療科目やクリニックの規模によって異なりますが、新規開業には8000万円程度かかるとされています。融資を受ける場合でも、自己資金として1500万円前後が必要になります。

また、クリニックが軌道に乗るまでは月々の返済が困難になってしまう可能性があるため、それなりの貯蓄をしておくことが大切です。

首都圏と地方の開業医は、年収以外で違いはある?

首都圏と地方の開業医では、年収だけでなく、患者さんとの関わり方にも大きな差があります。首都圏では、患者さんのニーズにマッチしていなければなかなか集患できないのに対し、地方では病院やクリニックの数がそもそも少なく、患者さんに選択の余地はあまりありません。

そのため、地方で開業したほうが集患しやすい傾向にあります。ただ、その分業務量や責任は増え、診療時間内に診察が終わらないことが多くなる可能性があるということを理解しておきましょう。

儲からない開業医の特徴

最後に、開業しても十分な収入が得られないと考えられる方の特徴を紹介します。「運営方針が確立されていない」「経営スキルが不足している」「患者や地域のニーズを理解していない」という場合はどのようなダメージを受けるのか、しっかりと理解しておきましょう。

開業後の運営方針やビジョンが確立されていない

運営方針とは「どのようなサービスを提供していくか」を定めるものです。
運営方針が確立されていないとクリニックとしての方向性が定まりませんし、雇用されているスタッフの意思統一もできません。

その結果、患者さんが納得できる医療を提供できず、集患にもつながらずに儲けが出ないという悪循環に陥っていきます。患者さんが抱える症状や悩みを解消するためにも、スタッフが働きやすい環境を作るためにも、開業する際は運営方針やクリニックとしての今後のビジョンを明確にしておくことをおすすめします。

経営スキルが不足している

開業した医師に経営スキルが備わっていないことも、儲からない特徴として挙げられます。
開業医は診療と並行して、クリニックの宣伝やスタッフの管理、医療機器の導入・管理といった経営面にも尽力しなければなりません。このようなマネジメントスキルやあらゆる場面での判断能力がないと、クリニックを存続させることが難しくなってしまいます。開業を目指すのであれば、医療知識・技術の習得だけでなく、経営について学んでおくことが大切です。

目先の利益を追求しすぎて、患者や地域のニーズを理解していない

儲からない開業医は、医療機器のレンタル代や物件の家賃といったコストを「どうやって抑えるか」に焦点を当ててしまいがちです。

しかし、目先の利益ばかりを気にして患者さんが納得できる医療を提供できなければ、集患にはつながりません。実際に儲けを出している開業医は、将来を見据えて医療機器や物件に多くの費用を支払っている傾向にあります。
それが後に事業拡大などにつながっていくのです。患者さんに「信頼できる」と命を預けてもらえるよう、患者さんファーストの経営を心がけましょう。

まとめ

開業医のメリット・デメリットや平均年収、地方開業医と首都圏開業医の違い、儲からない開業医の特徴などについてまとめましたがいかがでしたでしょうか。

開業医は勤務医と比べて平均年収が高い傾向にありますが、スタッフの管理や育成、経営といった診療以外の面での負担も大きくなります。

また、人件費や医薬品・医療材料費、医療機器のリース料、広告宣伝費、通信費、備品・消耗品費などさまざまなことにコストがかかるため、「年収が高い」という理由だけで開業するのは推奨できません。

ご自身が開業医に向いているか、クリニック経営を長く続けられるスキルがあるかどうかをしっかりと見極めたうえで、開業をご検討ください。