TOP > 開業医の年収・お金に関する話 > 開業歯科医の年収は?勤務歯科医との違いや年収アップの方法を解説

開業歯科医の年収は?勤務歯科医との違いや年収アップの方法を解説

                   
投稿日: 2024.04.18
                   

開業医と勤務医のどちらを選ぶかにあたって、気になるのが年収です。

多くの歯科医師が開業を目指しますが、実際のところ、どのくらいの収入が見込めるのか、詳しくはわからない方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では下記について解説します。

  • 開業歯科医の年収
  • 勤務歯科医の年収と比較
  • 歯科医師の年収アップの方法
  • 開業歯科医になるメリットとデメリット

歯科医師として開業を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

開業歯科医の年収

開業歯科医の年収

開業歯科医の平均年収、収益の内訳について解説します。

  • 開業歯科医の平均年収
  • 開業歯科医の収益の内訳

開業歯科医の平均年収は約1,200万円

厚生労働省の「第24回医療経済実態調査」の調査結果によると、個人の歯科診療所の損益(=開業歯科医の年収)は1,238万円となってます

本調査は2年1回実施されており、過去の結果では、

  • 第23回(2021年)1,420万円
  • 第22回(2019年)1,296万円
  • 第21回(2017年)1,187万円

(参考:医療経済実態調査|厚生労働省

2021年の第23回の調査では1,420万円となっていますが、これには「新型コロナウイルス感染症関連の補助金」が含まれており、補助金を除くと1,334万円になります。

これらの結果から、個人診療所の歯科医師の平均年収は、1,200〜1,300万円となります

開業歯科医の収益の内訳

同調査によると、個人の歯科診療所の収益の約80%が保険診療収益となります。

それに対して、歯科を除く一般診療所では、収益の98%が保険診療収益となることから、歯科診療所では自由診療の割合が高いことがわかります。

また、医療法人の歯科診療所では、保険診療収益の割合は約70%となり、自由診療の割合がさらに高まっています。

歯科の診療所で収益を上げるためには、自由診療を上手く取り入れて経営することが大切といえます。

勤務歯科医の年収

勤務歯科医の年収を年齢別、勤務先の規模に分けて解説します。

  • 勤務歯科医の平均年収
  • 勤務歯科医の年齢別の平均年収
  • 勤務先の規模別の平均年収

勤務歯科医の平均年収は約750〜800万円

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の調査結果によると、勤務歯科医師の平均年収は約750〜800万円となります。

勤務歯科医の年収は、年齢や役職、勤務先の規模によって大きく変動します。勤務先での診療実績や重要な役職につけるかが給与を上げるポイントになるでしょう。

年齢別の平均年収

勤務歯科医の年収は50歳前後をピークに約1,200万円になります。

しかし、圧倒的に労働者人口の割合が高い30歳前後では、年収が約500〜600万円と大きな差が生まれています。

下記の表は、勤務先の企業規模が10人以上の施設で勤務している、歯科医師の年齢別平均年収です。ここから所得税や住民税、社会保険料が差し引かれた金額が、実際の手取りとなります。

年齢所定内給与額年間賞与など年収
20~24歳18万円0円216万円
25~29歳37万円20万円464万円
30~34歳51万円25万円637万円
35〜39歳78万円61万円997万円
40〜44歳75万円106万円1,006万円
45〜49歳92万円143万円1,247万円
50〜54歳86万円52万円1,084万円
55〜59歳81万円229万円1,201万円
60〜64歳79万円98万円1,046万円

(引用:令和4年度賃金構造基本統計調査|厚生労働省

勤務先規模別の平均年収

クリニックや歯科医院の施設規模別の平均年収では、100〜999人の医療機関で勤務する歯科医師が最も高くて約900万円となっています。

一般的に、従業員数が多く規模が大きい職場勤務であるほど、年収が高くなる傾向ですが、歯科医師の場合はこの限りではないようです。

  • 従業員数10〜99人:平均年収は815万円
  • 従業員数100〜999人:平均年収は900万円
  • 従業員数1,000人以上:平均年収752万円

大きな歯科医院勤務よりも中小規模の歯科医院、もしくは、分院などを開設して事業拡大をしている医療法人で勤務するほうが、年収は高くなる傾向なのでしょう。

開業歯科医と勤務歯科医の平均年収の違い

以上の統計から、開業歯科医と勤務歯科医では、1.5〜2倍近く平均年収に差があることがわかります。

その一方で、歯科クリニックを開業するには、約5,000万円もの開業資金を準備する必要があり、集患率があがらず経営が上手くいかなければ、廃業や倒産してしまうリスクもあります。

また、開業歯科医と勤務歯科医では、以下のような違いがあります。

  • 事業所得か給与所得か
  • 経費が使えるか使えないか

それぞれ解説します。

事業所得か給与所得か

開業歯科医の年収は事業所得になるのに対して、勤務歯科医の年収は給与所得になります

事業所得は、事業で得られた収益から、人件費や医療材料費、家賃や水道光熱費などの経費を差し引き、残った分が利益となります。さらに利益から税金を引いた金額が開業歯科医の手取りの年収です。

経営を上手く効率化して、収益を増やし経費を減らすことができれば、上限なく収入を増やせることが事業所得の特徴です。

一般的に歯科は、ほかの医科の診療科よりも自由診療を取り入れやすいので、収益アップのための手段も豊富にあることが強みになるでしょう。

その一方で、勤務歯科医の給与所得の特徴としては、比較的安定しているという強みがあります

勤務先の歯科医院が潰れないかぎりは、給与所得として安定して収入を得ることができるでしょう。もし、勤務先が廃業や閉院になったとしても、ほかの歯科医院に移ることで給与所得はもらい続けられます。

ただし、給与所得は、基本的には年功序列、役職に応じて昇給する特徴があるため、事業所得のように経営を効率化して収益をあげ、収入を増やしていくことは難しいかもしれません。

経費が使えるか使えないか

個人事業主である開業歯科医は、経費を使い事業所得をコントロールすることができます

その一方、副業をしていない勤務歯科医は、給与所得のみとなります。

事業所得と給与所得には下記の違いがあります。

  • 収益ー経費ー所得控除=事業所得
  • 給与ー所得控除=給与所得

開業歯科医は、事業に関係する購入費用であれば、経費として認められます。

必要経費として認められるかどうかの判断が難しいものもありますが、上手く活用することで事業所得を抑えることができ節税にも繋がります。

そのため、個人事業主の開業歯科医の実際の年収は、統計結果と差があるかもしれません。

<経費として認められるものの例>

  • 学会や講演会の参加に必要な旅費交通費
  • 同業者との情報交換や懇親目的の交際費
  • 取引業者との打ち合わせ食事代

歯科医師が年収をアップさせる方法

歯科医師が年収を上げる方法について、特に効果的なものを紹介します。

いずれも簡単にできるものではありませんが、時間をかけて取り組むことで年収アップに繋がります。

  • 自由診療を積極的に取り入れる
  • ホームページやSNSで広告・宣伝をする
  • 歯科衛生士やスタッフの教育を行う
  • 医療法人化をして事業を拡大する
  • 年収アップが見込める勤務先に転職をする

自由診療を積極的に取り入れる

開業歯科医の年収を上げるには、自由診療を積極的に取り入れることが効果的です。

自由診療では、保険が適用されていない治療法の提供や高額な医療機器・材料を使用できるので、歯科クリニックの収益増加に繋がります。

歯科クリニックの収益は「患者数 × 一人あたりの医療費」によって決まります。

歯科医師一人で診療を行っている歯科クリニックでは、1日に治療できる患者数も限られてしまいます。したがって、売上を上げるためには、患者さん一人あたりの医療費をあげられる自由診療を、積極的に取り入れていくことがポイントとなります

ただし、ほとんどの場合、自由診療は患者さんにとって高額な治療になります。費用の詳細と治療で得られるメリット・デメリットを、患者さんの視点で丁寧に説明を行い納得してもらう必要があるでしょう。

歯科には自由診療のメニューが豊富にあるので、積極的に取り入れていけば、年収アップに繋がります。

ホームページやSNSで広告・宣伝をする

ホームページやSNSで歯科クリニックの診療内容を発信するのも、収益増加には効果的です。

歯科クリニックが年々増加しているという背景からも、競合の歯科クリニックと差別化するために、自院の特徴を発信することは大切でしょう。

最近では、保険診療と自由診療の違いについての詳細な説明、治療に使用する医療材料によって予後が変わることなど、患者さんが興味を持ちそうな情報をSNSで発信している歯科クリニックもあるようです。

患者さんのニーズに応える情報を開示している歯科クリニックは、信頼の獲得にも繋がりやすくなるでしょう。

歯科衛生士やスタッフの教育を行う

歯科クリニックの収益増加のためには、歯科衛生士やスタッフの教育も大切です。

歯科クリニックは治療だけではなく、定期検診やクリーニングなどの予防医療を目的に受診する患者さんも多いのが特徴です。患者さんが満足して継続的に通院してもらうためには、歯科衛生士のスキルアップが必要不可欠になります。

スタッフの接遇は、歯科クリニックの口コミやレビューに大きな影響を与えます。

歯科衛生士を含めたスタッフの教育は、歯科クリニック経営において重要なポイントになるでしょう。

医療法人化して事業を拡大する

個人診療所を医療法人化し、事業を拡大することで収益増加が期待できます。

より多くの患者さんを受け入れられるように、分院の開設や自由診療を専門とする歯科クリニックの開設など、事業拡大をすることで収入アップが図れるでしょう。

しかし、分院をひとつ開設するにしても、新たな開業資金が必要になりますし、分院で診療を行う歯科医師を雇う人件費も必要になってきます。スタッフの人件費や医療機器・材料も同様です。

しかも、新しく開設する歯科クリニックの集患が、必ずしも上手くいくとも限りません。

安定して集患をするためには、綿密な市場調査と患者さんの満足度を高めるサービスの提供が必要不可欠でしょう。

年収をあげるには事業を拡大することが最も効果的です。しかし、事業拡大には多額資金が必要になるため、それ相応のリスクも伴うことを認識しましょう。

年収アップが見込める勤務先に転職する

儲かっている歯科クリニックに転職することで、歯科勤務医は年収アップが期待できます

自由診療を積極的に行っている歯科クリニックかどうかもポイントになります。

患者さんが多く儲かっているということは、地域住民のニーズを満たした経営を行えているという証拠にもなります。勤務先の歯科クリニックが儲かっていれば、支払われる給与もその分高額になることが期待できるでしょう。

もし、分院を開設している医療法人に勤務しているのなら、分院長としての役職を目指すのも良いでしょう。

経営者ほどのリスクを背負わずとも、一般の勤務医よりも高い給与が得られる可能性が考えられます。重要な役職を任されるためには、経営者からの信頼や専門的な知識、高い技術力が必要となるでしょう。

開業歯科医になるメリット・デメリット

開業歯科医になるメリット・デメリット

開業歯科医になるメリットとデメリットを、年収以外の点も含めて紹介します。

開業歯科医のメリット

開業することで歯科クリニックの経営者となり、自身が考える理想の診療を提供できて、勤務医を超える年収も目指せることです。

下記の項目が、開業歯科医になるメリットになるでしょう。

  • 自分自身で診療方針を決定できる自由度の高さ
  • 勤務医時代をはるかに超える収入を得られるチャンスがある
  • 地域社会への直接的な貢献を実感しやすい
  • 歯科医療以外にも経営やマネジメントのスキルを身につけられる

労働対策研究・研修機構が行った「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、勤務医が開業を考える理由の、第1位は「自らの理想の医療を追究したいから」次いで「勤務医の収入は労働時間に比べ水準が低いから」という結果でした。

(参考:勤務医の就労実態と意識調査|労働対策研究・研修機構

開業医は病院よりも患者さんとの距離感が近いため、地域社会への貢献を実感できるということもメリットの一つになるのでしょう。

開業歯科医のデメリット

集患に苦戦し想定したよりも収益があがらず、経営状態が悪化すれば、最悪の場合は倒産のリスクもあることです。

下記の項目が、開業歯科医になるデメリットとなります。

  • 多額の開業資金が必要となる
  • 経営が安定するまで時間がかかる
  • 患者さんの人数によって収入が増減する
  • 経営やマネジメント業務など医療行為以外の業務が発生する
  • 勤務歯科医の時にしていた研究や論文執筆がしにくくなる

開業には多額の借入金が必要になり、集患には時間を要しますので、勤務歯科医に比べて収入が不安定になることも理解しておきましょう。

編集部まとめ

この記事では、開業歯科医の年収、勤務医との比較、歯科医師の年収アップの方法について解説してきました。

歯科医師は、開業することで年収アップが期待できます。

しかし、その反面、開業資金の借入や廃業のリスクを背負うことにもなり、経営やマネジメントに関する業務負担も発生します。

将来設計には、働き方や年収は大切な要素となりますので、本記事を参考に、最善の選択ができることを願っています。