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クリニックの開業資金を借り入れる方法とは?注意すべき点や審査のポイントなどについて解説!

                   
投稿日: 2024.04.24
                   

クリニックを開業するためには多額の開業資金が必要となり、そのための資金調達が大きな課題となります。開業するための経費として、医療機器や備品の購入費、診療スペースの賃料や改装工事費、人件費など様々な出費が想定されます。自己資金の準備も必要ですが、不足分は外部から調達する必要があります。そこで本記事では、クリニックの開業資金を借り入れる方法やその際に注意すべき点、審査のポイント、借り入れ先の種類などについて解説します。

クリニックの開業資金の借り入れが必要になる理由

クリニックの開業資金の借り入れが必要になる理由
なぜ、クリニックの開業資金を借り入れる必要があるのですか?

クリニックを開業する場合、診療科目や規模にもよりますが、5,000万〜1億円程度の初期投資が見込まれます。高度な医療機器を備える必要がある一部の診療科目では、開業資金が2億円を超える場合もあります。これらを自己資金だけで賄うことは難しいため、クリニックを開業する際は借り入れを行い、不足している資金を補うのです。

クリニックの開業に必要な資金の内訳について教えてください。

クリニックの開業資金は、設備資金と運転資金の2つに分けられます。設備資金は、物件取得費や内装工事費・医療機器購入費などに使用する資金です。一方、運転資金は家賃や人件費、医薬品費など、クリニックを運営するために幅広い用途で用いる資金です。通常、審査支払機関からの診療報酬の入金は数カ月先になり、開業当初に家賃や人件費などを支払うと手元の資金が不足してしまう可能性があるため、事前に運転資金を用意しておく必要があります。

クリニックの開業資金を借り入れる適切なタイミングはいつですか?

クリニックの開業資金は、開業前の準備段階で借り入れるようにしましょう。開業後に運転資金が足りないなどの理由で融資を希望しても、審査に通らない可能性が高く借り入れを行うことは難しくなります。

クリニックの開業資金を借り入れる際に注意すべき点について教えてください。

開業までにかかる期間には注意するようにしましょう。通常、開業資金の借り入れを申し込める時期は物件の契約締結後ですが、想定外に物件探しに時間がかかってしまうケースもありえるため、余裕のあるスケジュールを組むようにしましょう。

また、開業資金として借り入れたお金は、申告した通りの目的に使わなければなりません。ほかの目的に使用した場合は罰則が科され、全額の即返済を求められる場合もあるため、違反しないように注意してください。

クリニックの開業資金を借り入れる際の審査のポイント

クリニックの開業資金を借り入れる際の審査のポイントについて教えてください。

希望通りの融資を受けるには、審査のポイントを押さえておくことは大切です。

・開業の動機と事業計画

借り入れの審査に通るには、精度の高い事業計画を策定することが重要です。またそれとあわせて、開業の動機や診療理念などの経営方針もしっかりと提示する必要があります。どんな医療を提供して、どのように患者さんの役に立ちたいかを伝えたうえで、実現性の高い事業計画を提出できれば、審査を行う担当者にも良い印象を与えられるでしょう。

・資金状況

クリニックの開業資金を借り入れる場合は、ある程度の自己資金が求められることが一般的です。この金額は医師が高齢であるほど多くなる傾向にあります。すでにほかの金融機関からの借り入れがある場合は、その内容によっては審査に通りにくくなる可能性がある点にも注意が必要です。


クリニックの開業資金の借り入れ先の種類

クリニックの開業資金の借り入れ先にはどのような種類がありますか?

代表的な借り入れ先は下記になります。

・日本政策金融公庫

日本政策金融公庫ではいくつかの融資が用意されていますが、その中でクリニックの開業に利用できるのは以下の3つになります。

1. 新規開業資金(新企業育成貸付)

新規事業を開始する際もしくは事業開始後に、必要とする設備資金または運転資金として利用できます。融資限度額は7,200万円で、内2,400万円が設備資金、4,800万円が運転資金になります。返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が7年以内です。

2. 女性、若者/シニア起業家支援資金(新企業育成貸付)

女性、35歳未満の若者、55歳以上のシニアの起業家が対象の支援資金です。融資限度額は7,200万円で、内2,400万円が設備資金、4,800万円が運転資金になります。返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が7年以内です。

3. 新創業融資制度(その他の融資)

新たに事業を始める人もしくは事業を開始して間もない人が無担保・無保証で利用できる制度です。限度額は3,000万円で、内1,500万円が設備資金、1,500万円が運転資金になります。

・医師会の開業支援ローン

医師会には、クリニックの開業支援ローンが用意されています。設備資金や運転資金など多額の費用を借り入れることができますが、医師会への加入が必須です。借入上限額や融資期間、担保の要否といった条件は医師会ごとに異なるため、加入前の時点で確認するようにしましょう。

・独立行政法人福祉医療機構

独立行政法人福祉医療機構とは、医療機関向けに病院やクリニックなどの整備のために用いる資金の貸付事業を担当している厚生労働省管轄の組織です。主に施設の建築や土地を取得するための資金、医療機器や備品を購入するための資金の融資を行っています。借入上限額や融資期間は、融資する対象や資金の種類によって異なります。無床診療所の場合は「診療所不足地域」に該当する地域への開業でなければ利用できないので注意が必要です。

・地方自治体の制度融資

地方自治体の制度融資は、信用保証の料金を支払うことで、金利優遇などを受けられることが特長です。ただし、認可を受けるための手続きが複雑で、審査に時間がかかる点には注意が必要です。制度融資を利用したい場合は、地方自治体と連携している金融機関へ連絡しましょう。

・民間金融機関のプロパー融資

銀行や信用金庫などの民間の金融機関でも借り入れを行うことは可能です。クリニックの開業資金を調達する場合は、大手の金融機関よりも開業地にある地方銀行などを利用すると良いでしょう。融資に加えて、地域とのコネクションを得ることができ、ビジネスのサポートやスタッフの研修を実施してくれるケースもあります。

・リース会社

医療機器のリース会社の中には、開業資金の貸付を行っているところもあります。審査が早いことが特徴ですが、銀行より金利が高い傾向にあるので、利用する際は慎重に検討する必要があります。融資とあわせて医療機器のリース契約が必須になります。

クリニックの開業資金の借り入れ以外の調達方法

クリニックの開業資金の借り入れ以外の調達方法
借り入れ以外の資金調達方法にはどのようなものがありますか?

借り入れ以外の開業資金の調達方法としては、知人や親族から資金援助を受けることや、補助金・助成金制度を活用することが考えられます。知人などから資金援助の形で提供を受けた場合は、返済義務がないので自己資金を増やせることになります。ただし贈与税がかかる可能性があるため、事前に税理士などに手順について確認するようにしましょう。援助ではなく借り入れる場合は、返済期限などを定めた契約書を作成して、贈与とみなされないように対策を取る必要があります。

クリニック開業の際に活用できる補助金・助成金制度について教えてください。

クリニック開業に関連する補助金・助成金制度には下記のようなものが挙げられます。

・創業者向け補助金・給付金(都道府県)

・事業継承・引継ぎ補助金(中小企業庁)

・トライアル雇用助成金(厚生労働省)

補助金・助成金は原則として返済が不要で、融資とあわせて利用できる場合もあるので、クリニックを開業する際の助けになるでしょう。受給要件がある制度もあるため、詳細については事前にしっかりと確認するようにしましょう。

編集部まとめ

本記事では、クリニックの開業資金を借り入れる方法やその際に注意すべき点、審査のポイントや借り入れ先の種類などについて説明しました。この記事がクリニックの開業準備をする際の参考になりましたら幸いです。