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クリニックの開業にかかる資金はどれくらい?調達方法や診療科別の必要金額について解説!

                   
投稿日: 2024.01.08
更新日:2024.03.05
                   

近い将来に自身のクリニックを開業しようと考えた場合、開業にかかる費用がどの程度なのかを知っておくことは必要不可欠です。今回は、開業時にかかる費用の目安や、その資金を調達する方法について紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

クリニックの開業に資金はいくら必要?

まずは、クリニックを開業する際にはどういったものへの出費が必要になってくるのかについて紹介します。何に費用が発生するのかを知り、自身が開業したいと考えるクリニックの条件と当てはめながら読んでいただけると良いでしょう。

一般的にかかる初期費用

クリニックを開業するときかかる費用は、数千万円~数億円と、開業するクリニックの条件によって大きく変化します。特に、どこにクリニックを構えるかという土地の条件、ビル内のテナントを借りるのか戸建てを購入するのか、契約形態はどうするのかという建物関連の条件、何科の診療を行うのか・どのような診療を提供するのかという診療に関わる条件の3つが、初期費用の違いに大きく関係します。

開業前に費用がかかる代表的なものとしては、物件取得のための費用、内装工事費用、医療機器等の設備準備費用、備品の購入費用、運転資金などがあげられます。そのほか広告費用を計算しておいた方が良い場合もあるでしょう。

開業後の運転資金

新しく自身の代で開業するという場合は、運転資金の確保をしなければいけません。クリニックを開業しても患者さんを診療した代金がすぐに収入として得られるわけではないからです。診療報酬のほとんどは2カ月後に入金されるので、少なくとも最初の2カ月間は赤字状態が続くことを覚悟しておきましょう。

しかし、診療に必要となるスタッフの人件費やクリニックの賃料、消耗品の雑費などの支払いは、2カ月後まで先延ばしにすることはできません。そのため、開業する時点で約3カ月分の運転資金を用意しておくと、日々の生活に困らず診療を続けることができるでしょう。

ただし、この3カ月という期間は最低限の期間なので、可能であれば半年以上の運転資金を準備しておくと、余裕を持って経営することができます。なお、開業時はもちろんですが、突発的に何かあった際にも問題なく経営を続けられるように、常にある程度の額は運転資金として手元に用意しておくことをおすすめします。

自己資金が少ないときには

クリニック開業資金を抑えるには

開業にかかる費用は、少なくても数千万円を超えるのが一般的です。開業までに貯めておく自己資金は多いに越したことはありませんが、そのような大きな金額を全て自分で準備するのは非常に難しいことです。ここでは、自己資金が十分でない場合にはどうしたら良いのかについていくつか紹介します。

自己資金を調達する

融資などを検討する前に、自己資金を少しでも多く用意することを考えて準備を進めましょう。後述する融資を受けるためにも、自己資金を貯めておくことが必要です。一般的に用意する自己資金は、運転資金を含めて開業資金の1〜2割が理想とされています。自身が開きたいクリニックの条件を整理し、必要な資金の総額を把握したうえで適切な額を調達しましょう。

自己資金以外の資金を調達する

自己資金が大切なことは分かっていただけたと思いますが、自己資金以外にも開業資金を調達する方法はいくつかあります。まずは金融機関から融資を受けるパターンを紹介します。開業する際は、必要な額のほとんどを金融機関からの融資で補填することが一般的です。

融資を受けられる金融機関の中でもまず検討すべきなのは、日本政策金融公庫です。財務省所管下にある金融機関で、中小企業の創業支援などを行っています。日本の政策金融機関の1つで、低金利かつ固定金利で融資を受けられることが特徴です。しかしながら、ほかの金融機関に比べて審査が通るまでに時間がかかるというデメリットもあります。余裕を持って開業準備を行うことを考えている方はぜひ検討してみてください。

また、厚生労働省・こども家庭庁所管下にある独立行政法人福祉医療機構では、その時々の政策に合わせて、医療機関に対して特別な条件で融資を行うこともあります。例えば、医師が不足している地域に対して優遇措置がとられることなどもあるので、開業を考えている方はそうした政府系の機関も確認しておくと良いでしょう。次に検討できるものとして、民間の金融機関からの融資があります。民間金融機関といっても個人口座として多くの人が利用しているようなメガバンクではなく、開業する地域の地方銀行や信用金庫の融資を検討するようにしましょう。

理由としては、メガバンクに比べてこうした地方銀行や信用金庫の方が金利が低い傾向にあり、融資の審査が通りやすいというメリットもあるからです。また、地域によっては政府や機関と協力して事業者のためのサポートを行っている場合もあります。地域に密着した医療機関を目指す場合などは、そうしたサポートも利用して地域と良好な関係性を築いていくことも、潤滑な経営のために必要となるかもしれません。なお、融資の審査に通るために作成する事業計画書は、信頼と返済できる見込みがあることを、金融機関に感じてもらう必要があります。

事業計画書の作成は未経験の方が多いと思いますので、説得力のある計画書提出のために税理士などの専門家や、すでに開業している医師に意見を求め作成することが大切です。専門家の指導を受けていることを融資する金融機関に伝えることも、アピール方法として有効です。また、融資とは考え方が少し異なりますが、リース会社を利用することも資金調達の手段として認識しておくと良いでしょう。金利は高めですが、これまでに紹介した資金調達方法の中で最も審査基準が低いという特徴があります。医療機器の導入などに必要な初期費用を抑える手段として検討してみてください。ただし、医療機器のリースは利用期間のしばりがあることが多いので注意が必要です。

補助金・助成金を活用する

融資のほか、補助金や助成金を活用する手段も、覚えておいて損はありません。中小企業やクリニックが利用できる補助金は多様にあります。電子カルテやレセコンなど、ITツールへの優遇措置も増えてきています。導入するしないに関わらず、使える制度はしっかりと調べ、必要に応じて利用してみてください。

診療科目ごとの開業資金は?

何科を診療するかによって開業資金が変わると前述しましたが、ここでは代表的な科をピックアップして具体的な開業資金の目安を紹介します。診療科だけでなく、どういった検査や治療を実施するのか、どのレベルの機器を導入するかによっても変化しますが、ある程度の目安を知っておくことで開業のイメージがわきやすくなるかと思います。なお、ここではテナントを借りる場合を紹介するので、土地や建物をすでに持っているという場合はこれよりも全体的に価格が下がると考えてもらえればと思います。

歯医者

最初に歯科から紹介します。歯科の開業資金は5000万円前後といわれています。最も資金がかさむのは、医療機器の導入です。種類やメーカーなどにもよりますが、診療するうえで必ず必要になるものなので、最低でも医療機器だけで2000万円はかかると見積もっておくと良いでしょう。

内科

次に内科です。内科の開業資金は5000~8000万円程度です。内科の中でも消化器内科などを標榜して内視鏡検査を実施する場合は、内視鏡や内視鏡洗浄機、回復室など、一般的な内科よりも準備するものが多いので、7000~8000万円程度を見積もっておくと大きなズレがないでしょう。

外科

次に外科です。外科の場合はどの範囲の処置、手術に対応するかによって資金の総額が大きく変化します。外科の中でも脳神経外科の場合は、画像診断装置や病院と連携できる装置などを導入することで数億円単位での資金調達が必要となる場合もあります。どの範囲の診療をクリニックで行うのかによって大幅な違いがあるので、具体的なイメージを持ったうえで開業を考えると良いでしょう。

眼科

次に眼科です。眼科の開業資金目安は6000〜7500万円です。白内障や緑内障の手術を院内で行う設備を整えるのか、レーザー機器を導入するのか、検査機器はどの程度の精度のものを入れるのかなどによって大きく変わります。治療範囲やターゲットとする患者の年齢に応じて開業資金に大きく変化がある科といえます。

整形外科

最後に整形外科です。整形外科の場合は、リハビリテーションルームを用意するか理学療法士を雇うかなどで大きく必要資金が変わってきますが、6000~8000万円程度で見積もっておくと良いでしょう。整形外科は定期的に通院する患者さんで待合室が混雑することも考えられるので、広めのスペースを確保するなど、院内の構成も大切になってきます。

クリニック開業資金を抑えるには

クリニック開業資金を抑えるには

どのような条件のクリニックを開業するにしても、なるべく開業資金を少なくおさめたいと思うのは当然のことです。ここでは開業する際の額を抑えるために検討できる方法をいくつか紹介します。

開業地域を検討する

まずは、開業地域を見直すことをおすすめします。地域によって土地代は大きく異なりますし、ビル内に開業するにしても都市部に近付けば近付くほど賃料が上がるのは必然です。坪単価の安い地域を選んだり、クリニックに協力してくれる機関や人が多い地域を選んだりすることで、都市部よりも多く利益を出せる場合もあるでしょう。

また、前述したように利用できる金融機関や制度などはそれぞれの地域によって違いがあるため、なるべく開業時のサポートが手厚く受けられる地域を選ぶように心がけてみてください。融資を受ける際には、その地域でその診療がどのくらい必要とされているかも審査基準に含まれますので、競合となりうるクリニックが近くにどの程度あるのか、地域柄、年齢層はどうなのかなどをしっかりと調べたうえで開業地域を検討すると良いでしょう。

テナント開業を検討する

一般的にはテナント内に開業するか、戸建ての新しいクリニックを建てるかで初期費用が大きく異なります。戸建ての場合は賃料がかからない分、建設費用と土地代の2つが必要になるため、テナント開業に比べて初期費用が高くなる傾向にあります。地域や周辺環境によってはテナントでも賃料が膨らむこともありますが、多くの場合はテナント開業の方が初期費用を抑えることができます。

リースを利用する

先ほども少し触れましたが、開業資金の大部分を担うものの1つに医療機器の導入費用があげられます。開業当初から必要機材を全てそろえると一時的に大きな出費となるため、リースを利用して初期費用を抑えているクリニックも多くあります。

事業継承で開業する

何よりも初期費用を抑えられるパターンとして、事業継承による開業があります。継承時には、ある程度必要な機器がそろっているほか、運転資金も用意する必要がないため大幅に開業資金を減らすことができるのが魅力です。また、スタッフも引き継がれる場合が多いので、人材確保や経験不足の心配をする必要もありません。

身近に継承者を探している医師はそれほど多くないとは思いますが、日本の高齢化は医療業界においても同様に問題視されており、継承者がいないことを理由に閉院するクリニックが少なくないのも事実です。開業を近い将来として考える前から、少しずつ情報収集を行い、継承者を探しているクリニックがないかアンテナを張っておくことも大切です。

まとめ

開業を検討するうえで大きな課題となる開業資金について紹介しましたがいかがでしたでしょうか。クリニックを開業するためには検討すべき要素が多くありますが、開業コンサルタント会社なども増えてきているので、そうした専門知識を持った会社にサポートを依頼するのも1つの手です。

ただし、不当に高い金額を提示されたり、不必要なものをすすめられるリスクもあるので、相場を理解しておいたり、理想とするクリニックに最低限必要なものは何なのかを整理して把握しておいたりすることが大切です。利用できる制度や補助はたくさんあるので、そうしたものを利用しながらクリニックの開業準備を進めていきましょう。