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クリニックの開業資金の借り方や融資されやすい重要なポイントを説明

                   
投稿日: 2024.01.16
更新日:2024.03.05
                   

いざ自分のクリニックを開業しようと考えたときにぶつかる大きな壁のひとつとして、開業資金の問題があります。開業資金を自己負担金だけでまかなう人は少なく、多くの人は融資や補助金などを活用して資金を調達します。その中でも今回は、開業資金を調達するためのメジャーな方法である融資について説明します。開業準備に向けてぜひ参考になさってください。

クリニック開業資金の基礎知識

まずは、クリニックを開業するために必要な資金の額について、簡単にお伝えします。なににどのくらいのお金がかかるのかを知っておいて損はありませんので、おおよその金額感をつかんでおきましょう。

開業資金は一般的にいくら必要か

クリニックを開業する資金は標榜する科目や規模、建物の形態、機材の導入有無などによって大きく変化しますが、一般的には最低5000万円は必要だとされています。消化器内科などで内視鏡検査設備を備えるのであれば、これにさらに内視鏡、内視鏡洗浄機、回復室などの費用が加算されます。また、整形外科であればリハビリテーションルームを設けたり、理学療法士を雇ったりすることで開業資金が多く必要になることが考えられます。脳神経外科を開業する場合は、特に開業資金が大きくなる可能性があり、クリニック内にCTやMRIなどの画像診断装置を導入するとなると開業資金が2億円以上になるともいわれています。

開業医に必要な自己資金

クリニックを開業するためには多額の資金が必要となりますが、全てを自己資金でまかなえる医師は現代では非常に少なく、開業を目指す多くの医師は自己資金のほかにさまざまな手段を用いて資金を調達しています。しかしながら、自己負担が0で良いということではありません。一般的にはクリニックの開業にかかる総額の1〜2割を自己資金として準備しておくことが理想といわれています。自己資金が0の場合や、すでに住宅ローンなどがあって自己資金がマイナスの状態でクリニックを開業する場合もありますが、自己資金が少ない状態で経営を開始すると予期せぬトラブルなどが起きたときに、クリニックの継続が難しくなってしまうため、なるべく余裕のある状態で開業するのが無難です。

自己資金が少ない場合の対策

自己資金のほかにさまざまな手段で資金を調達するのが一般的だとお伝えしましたが、実際によく検討されるものとしては融資や助成金、補助金、リース会社の利用があげられます。それぞれの詳しい内容については後述します。

開業のときにかかる初期費用と運用費用にはなにがある

クリニックを開業するときには初期費用がかかり、経営を続けるためには運用費がかかります。まずは初期費用として必要となるものを紹介します。クリニックを開業する際は、診療を行う物件を取得するための費用がかかります。戸建てを新しく建てるのかテナントを借りるのかなどでも費用は変わりますが、開業に必要となる資金の中でも、この物件費用が大きな金額を占めます。クリニックの規模にもよりますが、医療従事者も患者さんも居心地の良いクリニックを作るためには内装工事も必要となるため、しっかりと見積もっておく必要があります。医療機器の導入にも多額の資金が必要となるため、どのような種類の医療機器を何台そろえるかも事前に考えておきましょう。その他、運転資金も開業資金の中でとても大切なものです。運転資金とは、診療を始めてから実際に診療報酬が入るまでの間の赤字を補填するために必要な資金のことです。診療を開始したらすぐに診療報酬の全てが収入として入るわけではありません。診療報酬が実際に入金されるまでにはおよそ2カ月間のギャップがありますが、お金がないからといって賃料やスタッフへの給料、医薬品などの支払いを全て先延ばしにするわけにはいきません。そのため、経営に影響しないようにあらかじめ運転資金を準備しておく必要があるのです。その他のランニングコストとしては消耗品の購入費や、患者さんを増やすためのWEBシステム導入費用などが考えられます。クリニックの開業に必須でないものでも、ゆくゆくの資金として見積もっておいたほうが良いものもあります。

クリニック開業時に受けられる融資

クリニック開業時に受けられる融資

ここでは、自己資金だけでは足りない資金を補うために検討できる融資について紹介します。場合によっては複数の機関から融資を受けることもありますので、ぜひ参考になさってください。

日本政策金融公庫

まずは日本政策金融公庫での融資についてです。政府系機関で、これまでに取引実績がなくても融資を受けやすいという特徴があります。比較的低金利、かつ固定金利で、クリニックを開業する際に検討する融資元としてはメジャーな金融機関です。開業時に日本政策金融公庫で受けられる融資の種類は、新規開業資金(新企業育成貸付)と女性、若者/シニア起業家支援資金(新企業育成貸付)と新創業融資制度(その他の融資)の3つです。それぞれ条件や上限金額が異なるので、必要に応じて使い分けましょう。また、日本政策金融公庫の融資は個人事業主でも申し込みができる点も魅力です。ただし、事業計画のチェックが厳しく、審査が通るまでの期間が長いという特徴もあるので、そうしたデメリットもしっかりと知っておくことが大切です。

民間金融機関

次に、民間の金融機関での融資についてです。民間の金融機関は数も多いので、開業する地域や特徴を踏まえてより条件の良い金融機関を選ぶと良いでしょう。民間の金融機関の中にはクリニックを開業する人に向けた特定のプランを用意しているところもあり、開業資金はもちろん、運転資金を融資してもらえるケースもあります。ただし、金利や上限、条件は金融機関によって様々です。よりよい条件で融資を受けるために交渉が必要となるときもあり、専門家を挟んで対策を練るのが望ましい場合もあります。民間の金融機関の場合は政府系機関と比べて審査が早い特徴があるので、資金調達に時間がない方にもおすすめです。名前を聞いたことがあるからといって安心してメガバンクに申し込む前に、しっかりと比較検討を行ったうえで金融機関を選ぶことが大切です。

医師会や地方自治体

次に、医師会や地方自治体からの融資についてです。まず医師会では、組合や自治体と連携して開業支援ローンを用意している場合が多く、設備にかかる資金や運転資金に加え、医師会の入会費を借り入れることができることもあります。ただし、医師会への入会が必須条件だということは覚えておきましょう。また、医師会によって上限や融資可能期間などは異なるので、入念に調べる必要があるでしょう。また、地方自治体では金利や保証料を優遇した中小企業向けの融資を行っているところがあります。日本政策金融公庫と同じく審査に時間はかかる反面、金利が比較的低いことが魅力です。万が一返済が難しくなった場合でも保証制度がある場合もあります。

福祉医療機構やリース企業

次に、独立行政法人福祉医療機構(WAM)についてです。医療機関や福祉施設の運営者に対して融資を行っている厚生労働省管轄の機関で、こちらも比較的金利が低く固定金利である点が魅力です。ただし、無床のクリニックの場合は診療助不足地域に指定されている場所でなければ利用ができないので、無床で開業を考えている方はこのエリアに該当するかどうかを事前に確認しておくと良いでしょう。最後にリース企業についても紹介します。医療機器などをリースしている会社が、開業資金を融資している場合もあります。医療機器をリースするときに開業資金も一緒に調達することができるという魅力がある一方で金利が高いのが懸念点です。ただし、比較的審査が通りやすいので、すぐに資金を調達したい方は選択肢のひとつとして覚えておくと良いでしょう。

開業資金融資以外にも助成金や補助金を利用する

融資以外にも知っておきたいのはクリニックの開業に伴って受けることができる助成金や補助金の制度です。助成金や補助金は、融資と違い返済する必要がないことが最大の魅力です。ここでは、クリニックを開業する際に利用できる助成金や補助金について紹介します。

創業者向け補助金・給付金

創業者向け補助金・給付金とは、国や地方公共団体から支給される補助金、給付金のことです。金額の上限は200万ですが、開業に必要な資金に自由に充てることができ、返済が不要です。ただし、受給したあとある一定の営業利益が出た場合には返済義務が課される場合もありますので認識しておきましょう。

事業継承補助金

事業継承の形で開業を行った際に利用できるのが、この事業継承補助金です。利用するための条件に「承継を機に経営革新に取り込むことができる」というものがあり、これまでの事業をさらに盛り上げ発展させるという計画のもとに支払われる補助金です。申し込みのためには、新しい設備を導入したり、今まで在籍していなかった医師を新たに雇ったりといった変化が必要です。

トライアル雇用助成金

最後にトライアル雇用助成金についてです。これは安定的な就職が困難とされた休職者を、ハローワークなどを介して試験的に雇用したときに支給されるものです。このトライアル雇用を行うことで最大3カ月、月に4万円まで支給を受けることができます。クリニックのスタッフとして正規雇用するかどうかを3カ月間で見極めることができ、人材を探すコストや人件費が抑えられるというメリットがあります。

開業資金の融資を受けるときの手順

開業資金の融資を受けるときの手順

開業資金の融資を受けるためには、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。ここでは始めに確認すべきことから審査後の流れまでを紹介します。

融資条件の確認

まずは融資の条件を確認しましょう。融資金額の上限や金利、返済期間、保証人の要・不要などをしっかりとチェックし、申し込むのに問題がないかを見極めましょう。

必要書類の提出

次に、該当の機関に提出する書類をまとめます。本人確認書類やこれまでの経歴がわかる書類、事業計画書、開業するクリニックの概要がわかる資料、確定申告書、資産状況が判断できる資料などが一般的ですが、その他に必要書類がある場合もあるので、事前に確認して漏れがないように準備しましょう。

融資担当者との面談

次は融資元の担当者との面談です。事前に提出した書類の確認や事業計画について現実性があるかのチェック、融資条件の説明などがあります。この面談では、経営者の人柄もみられるので注意してください。質問があればこのときに聞いてみると良いでしょう。

審査

融資を受けるに値するかの審査が、金融機関で行われます。融資元の機関により異なりますが、審査機関は2週間前後の場合が多くなっています。

融資の決定

審査終了後に申込者へ融資の可否連絡がきます。その後契約書へ署名、押印を行います。問題なく契約が完了すれば、その後融資が開始されます。

クリニック開業資金融資の際の注意点

最後に融資元を決定するときに気を付けるべきことについても紹介します。金利の特徴についても触れるので自分に合った条件を考えるときの参考になさってください。

固定金利のメリット・デメリット

固定金利の融資の場合は、返済期間中ずっと金利が固定されているため、景気変動の影響を受けないというメリットがあります。それに伴い、毎月の返済額が一定なので、収支の計算がしやすい点も魅力です。一方で、変動金利の場合より金利が少し高めに設定されていたり、繰り上げ返済ができなかったりすることがデメリットとしてあげられます。

変動金利のメリット・デメリット

変動金利制の場合は、日本国内の金利の変動によって毎月支払う額が変動します。固定金利に比べて金利が安く設定されていることが多く、金利が安いときには支払う額も減るのでメリットを感じやすいでしょう。しかし、バブル経済のときのように金利が急騰することもあるのでリスクを考えたうえで選択しなければなりません。

開業後でも融資を受けられるか

開業前に必ず覚えておくべき点として、開業後には基本的に融資は受けられないという点があげられます。開業後に経営状況が芳しくないから資金を調達したいと思っても、開業時と同じ条件では融資してもらえません。そのため、開業前にしっかりと融資してもらえる関係性を作っておき、余裕をもって経営ができるように準備しておく必要があるといえるでしょう。

まとめ

開業資金を調達するために大きな支えとなる融資を中心に紹介してきました。融資は、選択する機関によって、金利も条件も大きく変わります。いつまでにいくら必要なのか、どのような条件が合っているのかを見極める力が求められるといえるでしょう。