クリニック開業時にチラシは必要?院内で制作する方法や注意点、発注時のポイントを解説
クリニックを新規開業する際には、地域の方々にクリニックの存在を知ってもらう周知活動が欠かせません。ホームページやSNSといったオンライン広告手段も発達していますが、チラシによる広告も役立ちます。しかし、「開業時にチラシを作成すべきか」と悩むこともあるでしょう。
本記事では、クリニック開業時のチラシの必要性やメリット・デメリット、院内で制作する方法と注意点や効果的な配布方法などを解説します。
目次
クリニック開業時にチラシを作成するメリットとデメリット

新規開業時のチラシ作成には、以下のような効果が期待できます。
- 集患効果
- 認知の獲得効果
- ブランディング
チラシは、クリニック周辺の特定エリアに直接アプローチできる広告手段です。
新規開業時に近隣住民へクリニックの存在を知らせることができるだけでなく、「今すぐに受診する予定はないが病気になったときはクリニックを探す」という潜在層やインターネットを利用しない高齢の方にも訴求可能です。
また、クリニックのコンセプトや理念を反映させたチラシを配布することで、地域医療での存在を確立するというブランディングの役割も果たせます。
新規開業クリニックの集患において、チラシ作成にはさまざまなメリットがあります。
- 地域住民への認知拡大に直結する
- 配布エリアを限定しやすい
- 手元に残る媒体で繰り返し見てもらえる
- 視覚的な訴求力が高い
- 工夫すれば低コストで実施できる
- 認知施策、獲得施策の両方の側面を併せ持っている
開業初期は、「どこにあるのか」「どの診療科なのか」を地域の人に知ってもらうことが重要です。
チラシは年齢層を問わず幅広い層に情報を届けやすく、手元に残って目に触れる機会が増えれば、クリニックの名前や存在が患者さんの意識に残ってクリニック受診の際に選択肢として候補に上がりやすくなります。
また、開院の挨拶や院長の写真、診療方針、クリニックの特徴などを掲載すれば、クリニックの雰囲気や想いを伝えるきっかけにもなります。開院前の段階で「どのような先生がいてどのような診療をしてくれるのか」を伝えることで、初診時の心理的ハードルを下げる効果も期待できます。
さらに、Web広告との併用による相乗効果もチラシ作成ならではのメリットです。チラシにQRコードを掲載し、ホームページや予約フォーム、SNSへ誘導することで、オフラインからオンラインへの導線を自然に作ることができます。これにより、興味を持った人がスムーズにアクセスしたり予約したりできるようになり、反響の可視化にもつながります。
このように、チラシは単なる紙媒体の広告ではなく、地域で信頼を築く第一歩として重要な役割を果たします。費用対効果を高めるためには、配布エリアの選定やデザインの工夫、オンライン施策との連携を意識して、戦略的に活用することがポイントです。
はい、チラシ広告にはメリットだけでなく注意すべきデメリットも存在します。
- スペースが有限であるため、情報量に限りがある
- 費用対効果が低くなってしまうことがある
- 特定の疾患や属性に絞った精密なターゲティングがしにくい
- 情報の鮮度を保ちにくい
チラシは掲載できる情報量に限りがあるため、どの情報を掲載するかを精査する必要があります。1回の配布で得られる反響は限定的で、複数回実施しなければ効果が見えにくいため、集患につなげる定期的な配布のために広告コストがふくらむケースもあります。
ターゲット層に届きにくいことも課題といえます。配布エリアの選定を誤ると、来院圏内の方や診療科に関心のある層に届くとは限りません。
また、情報の鮮度が保ちにくい点も注意が必要です。紙媒体は一度印刷してしまうと、診療時間やキャンペーン内容の変更があっても差し替えができません。開業準備のスケジュールがずれたり、内覧会の日程が変更になった場合、印刷済みのチラシが使えなくなることもあります。
さらに、Web集客との連携が取れていないと、広告効果が分散してしまうという問題もあります。近年はスマートフォンで情報を得ている方が多く、QRコードやホームページへの誘導を設けていないと情報を十分に届けられず、せっかく興味を持ってもらっても来院につながりにくくなります。
このように、チラシ配布は手軽に見えても、実際には費用や手間、情報精度の管理など多くの点で計画性が求められます。効果的に活用するためには、開業地域の特性やほか媒体とのバランスを踏まえた戦略を立てることが大切です。
クリニック開業時のチラシを院内で制作する方法とポイント

院内でチラシを自作することは可能です。チラシを自作するメリットは、外注費を節約できる点や、自院の患者さんのデータや地域特性を考慮して狙ったターゲット層に合わせた内容を柔軟に作り込める点です。
一方で、チラシの作成に必要なデザインやコピーライティングの知識やスキルが不足していると、完成したチラシのクオリティが低くなるおそれがあります。
また、医療広告のルールを把握しきれずに、違反事項を載せてしまうおそれもあります。院内で作成する際は、事前に医療広告ガイドラインを十分確認し、内容が規制に抵触しないようにしましょう。
近年はデザインソフトやテンプレートサービスが充実しており、専門業者に依頼しなくても完成度の高いチラシを作成できます。ただし、効果的なチラシにするためには、使用するツール選びと情報整理が必要です。
ツールは、デザイン初心者でも扱いやすいクラウド型サービスの活用を検討してみるとよいでしょう。ツールによってはテンプレートや医療系素材が豊富で、院名や診療科目、地図、写真などを配置するだけで、短時間で見栄えのよいデザインを作成できます。印刷に適した高解像度データの書き出しに対応しているサービスなら、ポスターや折込用チラシとしてそのまま利用することもできます。
デザイン前に、以下の4つの情報を整理しておきましょう。
- クリニックの基本情報:名称や住所、電話番号、診療時間、休診日など
- 院長のプロフィールや理念、専門分野などの紹介文
- クリニックの特徴・強み:設備やバリアフリー対応、駐車場の有無など
- アクセス情報:地図や最寄り駅、バス停など
これらをあらかじめ整理しておくことで、レイアウトや構成に迷う時間を短縮できます。患者さんが一目で必要な情報を把握できるよう、文字量を抑え、写真やアイコンを効果的に使うことも大切です。
印刷は院内で行うこともできますが、小ロットでも印刷してもらえるネット印刷サービスを利用すると、コストを抑えながら高品質な仕上がりを得られます。
院内スタッフによるチラシの作成は、クリニックの想いや温かみを反映させることができます。ツールの機能を活かしながら、見やすく信頼感のあるデザインを心がければ、効果的なチラシを作ることができるでしょう。
チラシの印刷に使われる紙にはいくつか種類がありますが、一般的にはコート紙かマットコート紙が選ばれます。コート紙とは表面に光沢コーティングが施されたつるつるの用紙で、写真やイラストを鮮やかに印刷できるのが特徴で、カラフルなデザインや写真入りのチラシにはコート紙が適しています。
一方、マットコート紙は光沢を抑えた上質な風合いの紙で、落ち着いた高級感を出したいときに使用されます。
チラシのサイズは用途によってさまざまですが、一般的なのはA4サイズで、ポスティングではA5やB5サイズのような小ぶりなものを使うこともあります。これらはポストに折らず入れやすく、手に取ったときかさばらないメリットがあります。
クリニックのチラシを作成する際には、医療広告ガイドラインをはじめとする医療広告規制にしっかりと留意する必要があります。
医療法では、病院や診療所など医療機関の広告について細かなルールが定められています。医療機関の広告は、ほかの業種のように自由な表現が認められているわけではなく、誤解や不安を招く表現、根拠のない効果の強調などが厳しく制限されています。
チラシはもちろん、看板やホームページ、SNSに至るまでクリニックが行う広告全般が対象で、ガイドラインに違反すると行政指導の対象となるだけでなく、クリニックの信頼にも関わるため、チラシ作成時は十分に注意しましょう。
クリニック開業時のチラシを発注する際のポイント

医療系の広告制作の経験がある業者に依頼するのがよいでしょう。具体的には、クリニック専門の開業コンサル会社や医療広告に強いデザイン会社、あるいはチラシ印刷を多く手がける印刷会社のデザイン部門などが考えられます。
ポイントは、医療広告ガイドラインを熟知しているかどうかです。デザインクオリティや地図作成や写真撮影の有無など対応範囲も含め比較検討し、自院に合った依頼先を決定してください。
一般的なチラシ外注時の流れは次のとおりです。
- 企画打ち合わせ(ヒアリング)
- 見積もりと発注の確定
- デザイン案の作成および校正
- 印刷工程
- 配布または発送準備
業者によっては、配布計画まで含めて提案してくれることもあります。なお、デザイン案の作成と構成だけを依頼するというように、一部工程のみ外注する方法もあるので、自院のリソース状況や予算に応じて、外注と内製を組み合わせながら適切な形で進めましょう。
クリニック開業時のチラシの配布方法

チラシ配布には主に4つの方法があります。開業告知ではこれらを組み合わせることで効率よく地域に周知できます。
- 新聞折込チラシ
- ポスティング
- 街頭での配布
- メールなどに添付する電子チラシ
街頭での配布は内覧会当日の呼び込みなどスポットで活用し、電子チラシはSNSフォロワー向けに情報拡散、といったように役割分担させてもよいでしょう。
チラシの配布後は、チラシの配布日時や枚数とお問い合わせの件数や来院数を記録して、効果を測定して運用を見直すのがポイントです。
配布範囲は、クリニックの想定商圏を分析して決定します。想定商圏内に位置している住宅街やオフィス、学校など人口密集エリアを洗い出しましょう。その範囲を基本の配布エリアとします。特に下記の内容を考慮します。
- 来院可能な地域か
- 対象とする患者層が多く住むか
- 競合はいないか
これらを踏まえてチラシを配布します。
さらに、配布のタイミングや曜日の工夫も大切なポイントです。例えば、土曜朝に折込を入れると家族で回覧されやすい、平日昼間のポスティングは自宅にいる高齢の方の目に留まりやすい、といったことが考えられます。配布範囲とあわせて配布タイミングも配慮し、より反響を得られるよう計画してください。
編集部まとめ

新規開業時のチラシは、地域住民への効果的なPR手段です。自作する場合も、外注する場合も注意すべき点がいくつかあります。特に、医療広告ガイドラインなどの規定を遵守することは大切です。
本記事のポイントを参考に、チラシを上手に活用してクリニック開業を成功させましょう。




