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オンラインクリニックの開業方法は?必要な手続きやツール、準備期間の目安を解説

                   
投稿日: 2026.01.05
更新日:2025.12.15
                   

近年、インターネットを活用したオンライン診療が普及し、来院せずに医師の診察や薬の処方を受けられる仕組みが整いつつあります。新型コロナウイルス禍で規制緩和が進んだこともあり、自宅や職場からスマートフォンやパソコンを通じて診療を完結できるオンラインクリニックが注目されています。本記事では、オンライン診療のみでの開業とその方法について解説します。

オンライン診療のみで開業できる?

オンライン診療のみで開業できる?

オンライン診療のみでクリニックを開業することは可能なのでしょうか。本章では、開業の可否と対面診療との違いについて解説します。

オンライン診療のみでの開業の可否

結論からいえば、必要な届出を行い所定の基準を満たせばオンライン診療のみでも開業は可能です。ただし、日本の診療報酬上の取り扱いでは、オンライン診療を実施するための施設基準に対面診療を行える体制であることが条件とされています。

また、事前に地方厚生局へ情報通信機器を用いた診療の届出を提出し、研修修了などの必要要件を満たすことで、オンライン診療料の算定が可能です。届出には緊急時に対面診療できる医療機関名を記載する欄があり、オンライン診療のみを標榜する場合でも緊急時や対面診療が必要な場合への対処計画を示すことが求められます。

オンライン診療と対面診療の違い

オンライン診療と対面診療の大きな違いは診療方法です。対面診療では医師が直接患者さんに触れたり聴診器を当てたりといった各種検査を行えますが、オンライン診療では画面越しの視診と問診が中心であり、触診や聴診、即時の検査ができません。

このため、オンライン診療では得られる情報が限られ、対面であれば気付ける症状の見落としリスクがある点に注意が必要です。

一方で、オンライン診療は、患者さんが自宅や職場にいながら診察を受けられます。そのため、通院に伴う負担や待ち時間が大幅に減り、ほかの患者さんとの接触がないぶん院内感染のリスクも低減できるという利点があります。このように双方の診療形態の違いを理解し、状況に応じて使い分けることが重要です。

医師が提供できるオンラインサービスの種類

医師が提供できるオンラインサービスの種類

オンラインで医師が提供できるサービスには大きく2種類あります。一つは診療報酬が伴うオンライン診療、もうひとつは健康相談に応じる遠隔健康医療相談サービスです。オンラインクリニックを開業する際には、自身がどの形態のサービスを提供するのか明確にしておきましょう。

オンライン診療

オンライン診療は、医師と患者さんがスマートフォンやPCなどの情報通信機器を介してリアルタイムで診察と診断を行い、診断結果の説明や処方まで行う医療行為です。ただし、オンライン診療を行うには、厚生労働省が定める研修修了地方厚生局への届出と受理が必要です。

遠隔健康医療相談サービス

遠隔健康医療相談サービスとは、医師またはほかの医療従事者がオンライン上で健康上の相談に応じるサービスです。テレビ電話やチャットを使って気軽に相談できるもので、診断や処方などの医療行為は行わず、あくまで相談の範囲に留まる点がオンライン診療との大きな違いです。

オンラインクリニック開業のメリットとデメリット

オンラインクリニック開業のメリットとデメリット

オンラインクリニックを開業するにあたり、従来の対面中心のクリニックにはないメリットが数多くある一方で、注意すべきデメリットも存在します。ここではオンラインクリニックの代表的な長所と短所を挙げ、それぞれについて解説します。

オンラインクリニックのメリット

オンラインクリニックには、患者さんにとっての利便性向上と医療の提供側にとっての効率化という両面のメリットがあります。

項目内容
地理的な制約を超えて医療提供できる
  • 遠方や高齢などで通院困難な患者さんにも医療アクセスを提供可能
  • 診療圏外の新たな患者さんを診療可能
患者さんの通院負担・待ち時間の軽減
  • 自宅や職場から受診できるため移動時間を削減
  • 待合室での待ち時間が不要
  • 仕事や育児中でも昼休みや隙間時間で受診可能
感染症リスクの低減患者さん同士が同じ空間に集まらないため、院内感染あるいは二次感染のリスクを低減
治療の継続率向上と業務効率化
  • 再診率の向上が期待できる
  • 予約制で時間を有効活用できる
  • 診察室の準備や後片付けの手間が少ない
  • スタッフの業務負担を軽減できる

このように、オンラインクリニックには患者さんおよび医療者双方にとって利便性が高く、効率的な医療提供を実現できるメリットがあります。

オンラインクリニックのデメリット

一方で、オンラインクリニックにはいくつかの制約や課題も存在します。開業にあたっては以下のようなデメリットを把握し、必要な対策を講じておくことが重要です。

項目内容
診察で得られる情報が限られる
  • 触診や聴診ができず、視覚情報と患者さんの申告に依存する
  • 隠れた症状や徴候を見落とすリスクがある
  • リスクの高い症例は対面診療へ誘導する判断力が必要
オンラインのみでは処方できない薬剤がある
  • 医療用麻薬や向精神薬などはオンライン診療で処方不可
  • 睡眠薬や一部の糖尿病治療薬は初回のみ対面診察が必要な場合あり
  • ワルファリンカリウムなど検査値に応じた投与調整が必要な治療は不向き
通信トラブルや機器操作の課題
  • 通信状態が悪いと診療が成立しないことがある
  • 高齢の方などIT操作に不慣れな患者さんが接続トラブルを起こすことがある

以上のように、オンラインクリニックには利便性や効率化と引き換えに制約や運用上の課題があります。しかし、これらのデメリットは事前に十分な対策を講じることで軽減可能です。

オンラインクリニックの開業に必要な書類と手続きの流れ

オンラインクリニックの開業に必要な書類と手続きの流れ

オンラインクリニックであっても、医療機関開設に必要な各種届出や手続きは通常のクリニック開業と基本的に同様です。そのうえで、オンライン診療を行うための追加の届出も求められます。ここでは、開業に必要な主な書類と手続きの流れを整理します。

オンラインクリニック開業な必要な書類

オンラインクリニックを含め、診療所を新規開業する際には以下のような書類を準備し、提出する必要があります。

項目内容
診療所開設届
  • 管轄の保健所に提出する届出で、医療法により開設後10日以内に届け出が必要
  • 添付書類:開設者・管理者の医師免許証写し、経歴書、施設の平面図、設備一覧など
保険医療機関指定申請書
  • 保険診療を行う場合に地方厚生(支)局へ申請が必要。申請は通常、開業月の前月中頃までに行うと翌月1日付で指定を受けられる
  • 指定後、医療機関コードが交付され診療報酬請求が可能となる
オンライン診療に関する届出
  • オンライン診療料を算定するには、情報通信機器を用いた診療施設基準の届出が必要
  • 提出先は地方厚生局
  • 届出内容:対面診療体制の有無、緊急時連携医療機関の記載、医師の研修修了証明の添付
開業届
  • 個人事業の場合、税務署に個人事業の開業・廃業等届出書を提出
  • 提出期限の目安は開業日から1ヶ月以内
  • 法人で開業する場合は、別途法人設立届出書などの提出が必要

以上が主な書類ですが、開業形態や扱う診療内容によって追加の許可や届出が必要になるケースもあります。オンラインクリニックだから特別に免除される手続きはなく、基本的な開業手順は通常のクリニックと同じと考えて準備しましょう。

参照:

『診療所開設の手引き  《個人開設》』(港区みなと保健所)
『A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続』(税務署)

オンラインクリニック開業までの流れ

必要書類の提出も含め、オンラインクリニック開業までの一般的な流れを時系列で解説します。

項目内容
開業計画の策定
  • 事業計画書と資金計画を作成
  • 収支予測、初期投資、運転資金を明確化
  • 必要に応じて金融機関への融資申請を実施
物件の確保・環境整備
  • オンライン主体でも事業所としての拠点が必要(自宅以外のオフィスなど)
  • 物件契約後、保健所と事前相談してレイアウトや設備を整備
  • 通信回線契約やIT機器購入、ネット環境の整備を進める
各種届出・申請
  • 開設届の提出準備を開始(開業10日前までに提出)
  • 保健所に事前相談し、必要書類と現地調査の対応を確認
  • 厚生局への保険医療機関指定申請を実施
  • スタッフ採用を完了し、必要人数を確保
開業直前の準備
  • 医療機器、オンライン診療システム、電子カルテを導入、動作確認
  • 診療リハーサルでビデオ通話や予約システムの動作を確認
  • 決済システムやレセプトソフトの設定および試験運用を実施

以上が大まかな流れです。これらを計画的に進めつつ、一般的なクリニック開業手続きも並行して滞りなく行うようにします。

オンラインクリニックの開業に必要な環境やツール

オンラインクリニックの開業に必要な環境やツール

オンラインクリニックを運営するには、安定したインターネット環境と各種デジタルツールの導入が不可欠です。ここでは、オンライン診療に必要となる設備およびツールを項目別に解説します。

インターネット環境

オンライン診療はビデオ通話やデータ通信を行うため、高速で安定したインターネット回線が必要です。具体的には、光回線などのブロードバンド回線を用意し、可能であれば有線LAN接続で通信します。通信速度だけでなく、診療中に突然切断されることのないように安定性も重要です。

パソコン

診察用のパソコンはオンラインクリニックになくてはならないデバイスです。ビデオ通話による診療と同時に電子カルテの操作などのマルチタスクが発生しますので、高性能なパソコンと複数のディスプレイを用意するとよいでしょう。1画面に患者さんとのビデオ通話、もう1画面に電子カルテを表示すれば、患者さんの顔を見ながらスムーズに記録できます。

ヘッドフォンやマイクなど

オンライン診療中は、音声の明瞭さも重要です。患者さんとの意思疎通に支障がないよう、高品質なマイクとスピーカー(またはヘッドセット)を準備しましょう。パソコン内蔵のマイクやスピーカーは簡便ですが、音がこもったり周囲の雑音を拾ったりして聞き取りにくいものもあり、患者さんにストレスを与えかねません。ノイズキャンセリング機能付きのマイクやクリアな音質のスピーカーフォンを導入するとよいでしょう。

オンライン診療システム

オンラインクリニックの核となるのが、患者さんとの予約や問診、ビデオ通話、決済までを支えるオンライン診療システムです。これは、ビデオ会議ソフトと医療用機能を組み合わせたような専用システムで、国内ではさまざまなサービスが提供されています。各社の機能や使いやすさは異なるため、自院のニーズに合ったシステムを選ぶことが重要です。

電子カルテ

オンラインクリニックでは電子カルテの導入が欠かせません。対面のクリニックであれば紙カルテも不可能ではありませんが、オンライン診療ではデータ連携や在宅からのアクセスといったデジタルならではの利点が大きいためです。クラウド型の電子カルを採用すれば、自宅や出先からでもカルテにアクセスでき、在宅勤務的な柔軟性も確保できます。オンライン診療システムと同じ会社が提供する電子カルテであれば、患者情報や予約情報がシームレスに連携して入力の手間が省けることもあります。

決済システム

対面診療であれば現金やクレジットカードを窓口で受け取ることができますが、オンラインクリニックでは患者さんと直接金銭のやり取りができないため、オンライン決済の仕組みを整える必要があります。多くのオンライン診療システムにはクレジットカード決済機能が内蔵されており、患者さんが予約時または診療後にカード情報を入力することで、自動で診療費の決済が完了するようになっています。

オンラインクリニックの開業にかかる準備期間の目安

オンラインクリニックの開業にかかる準備期間の目安

オンラインクリニック開業の準備期間は、開業形態や計画内容によって異なりますが、一般的に従来のクリニック開業に比べれば短縮できる部分もあるといえます。オンラインクリニックでは、大がかりな内装工事や医療機器設置が少ない分、物件取得から開業までの期間をある程度短縮できる可能性があります。しかしながら、行政への各種届出には審査や調整の時間がかかりますし、システム選定や導入にも意外と時間を要するものです。そのため、オンラインクリニックであっても、3~6ヶ月程度は余裕をもって計画するとよいでしょう。

オンラインクリニック開業時の注意点

オンラインクリニック開業時の注意点

オンラインクリニックを開業する際には、事前に対策しておくべきポイントがいくつかあります。最後に、特に注意したい事項を挙げて解説します。

開業前に集客方法とコストを検討する

オンラインクリニックでは患者さんとの出会いもオンライン上です。従来のように地域の看板や評判だけでは十分な集患が期待しにくいため、効果的なWeb集客方法を開業前に検討しておきましょう。

コスト面の計画も大切です。Web広告を出稿すれば毎月数万円~数十万円の費用がかかる場合もありますし、ホームページ制作やSEO対策を業者に委託すれば初期費用が発生します。これらの集患コストを事業計画に織り込み、患者さん一人あたりの集患コストをシミュレーションしておくとよいでしょう。

オンラインのみでは処方できない薬剤がある

前述したように、オンライン診療だけでは処方できないお薬が存在します。開業前に想定される診療内容について、該当する薬剤がないか確認し、その対策を考えておきましょう。例えば、麻薬や向精神薬(抗不安薬や睡眠薬の一部など)は遠隔診療のみでの処方が禁じられています。オンラインクリニック開業前に、対象疾患の診療ガイドラインや厚労省の通知をチェックし、オンラインで可能な範囲と対面が必要なケースを整理しておきましょう。

パソコンやスマホの扱いに慣れていない方の集客が難しい

オンライン診療の便利さは誰にとっても有用ですが、現実には高齢の方を中心にデジタル機器の扱いに不慣れな層が一定数存在します。そうした方々にオンラインクリニックのサービスを利用してもらうのは簡単ではありません。

この課題に対しては、まずターゲットとする患者層を明確にすることが重要です。一方で、使い方を丁寧に教える取り組みも有効です。ホームページや紙の案内に図解入りの利用手順書を掲載したり、初回接続時にスタッフが電話サポートしたりすることで、年配の患者さんでも安心して利用できるようになります。

まとめ

まとめ


オンラインクリニックは今後ますます需要が高まると期待される分野です。対面とオンライン双方のメリットを活かし、デメリットを補完し合う形で運営できれば、患者さんにとっても医療者にとっても満足度の高いクリニックとなるでしょう。本記事で解説したポイントを参考に、時代のニーズに合ったオンラインクリニック開業にチャレンジしてみてください。

【参考文献】