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オンライン診療の要件とは?必要な書類やツール、具体的な手続き方法を解説

                   
投稿日: 2026.01.16
更新日:2026.01.12
                   

近年、情報通信技術の発展とともに、医療の提供方法も大きく変化しています。新型コロナウイルス感染症の流行を契機として、オンライン診療への注目が高まり、多くの医療機関で導入が進んでいます。

本記事では、オンライン診療の基本的な定義から、導入に必要な要件、具体的な手続き方法まで、医療機関が押さえておくべきポイントを解説します。

オンライン診療とは

オンライン診療とは

オンライン診療とは、その名のとおりオンラインで診療を行うことをいいます。ここではオンライン診療の定義や、対面診療との違いなどを解説します。

オンライン診療の定義

オンライン診療は、情報通信機器を通じて行う遠隔医療の一形態です。

厚生労働省の指針において、オンライン診療は、タブレットやスマートフォン、パソコンなどの情報通信機器を活用して診断や処方などの診療をリアルタイムで行う行為と定義されています。

参照:『オンライン診療の適切な実施に関する指針』(厚生労働省)

オンライン診療と対面診療、電話診療との違い

オンライン診療と対面診療の大きな違いは、得られる情報の量と質にあります。

対面診療は、視診、聴診、触診、打診といったさまざまな診察手法を用いて、患者さんの状態を多角的に評価します。

一方、オンライン診療は画面越しの視覚情報と音声情報に限られ、触診や聴診などができず、細かな身体所見の確認が難しいという制限があります。実際には、視診に関しても、対面で直接診察する際の細かな表情の変化や皮膚の色調、患部の質感といった微妙な情報までは正確に把握することができません。

電話診療は、音声のみでのやり取りとなるため、オンライン診療に比べ得られる情報が更に限定されます。

オンライン診療が向いている診療科や症例

オンライン診療に向いているのは、病状が安定しており定期的な経過観察や服薬管理が中心となる慢性疾患です。

具体的な代表的な疾患は、次のとおりです。

  • 糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病
  • 気管支喘息、COPD
  • 慢性心不全、冠動脈インターベンションなどの処置後の虚血性心疾患
  • 逆流性食道炎、慢性胃炎などの消化器疾患
  • 食物などのアレルギー
  • 脳血管障害、脳腫瘍などの慢性期
  • 睡眠障害
  • 精神疾患、発達障害、認知症

ただし、病状が安定していることや、定期的な採血、対面診療と組み合わせる必要など、それぞれの疾患でさらに細かく必要な条件が定められています。

参照:『オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態』(日本医学会連合)

これらの内科や精神科領域の疾患のほかに、外科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻咽喉科などさまざまな診療科でオンライン診療による診療が可能とされています。

参照:『オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態』(日本医学会連合)

いずれの場合も、やはり、病状が安定していることが前提です。

オンライン診療の限界を理解したうえで適切な症例を見極め、緊急性の高い症状や身体診察が不可欠な急性疾患については、速やかに対面診療へ移行する必要があります。

オンライン診療に必要な法的要件

オンライン診療に必要な法的要件

オンライン診療を実施する際は、医療法や医師法などの法令、および厚生労働省が定めるガイドラインに則った体制整備が求められます。

オンライン診療の根拠法令とガイドライン

オンライン診療を実施するにあたり、確認しておく必要があるのは、医師法とオンライン診療の適切な実施に関する指針です。

オンライン診療の実施にあたって遵守が求められるのが医師法20条です。医師法20条では下記のように規定されています。

『医師は自ら、診察をしないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書、若しくは死産証明書を交付し、又自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りではない』

オンライン診療の実施に関係する箇所は『医師は自ら、診察をしないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し』の部分です。

オンライン診療においては、チャット機能のみで診療行為を行うといった行為が医師法20条に抵触するおそれがあります。

オンライン診療の適切な実施に関する指針には、初診の取扱いや診療計画書の作成などのオンライン診療の実施にあたって守るべき事柄が記載されていますので、あらかじめ把握しておきましょう。

参照:『医師法』(e-GOV)
   『オンライン診療の適切な実施に関する指針』(厚生労働省)

オンライン診療の実施医療機関に求められる要件

オンライン診療を実施する医療機関には、患者さんの安全と医療の質を確保するための体制整備が必須とされています。

具体的には、以下のような事項を遵守するべきであると定められています。

  • 医師は医療機関に所属し、問い合わせ先を明らかにする
  • 必要時に速やかに対面診療を行える体制を整える
  • 診療の環境を整える
  • 指針を遵守していることを公表する

また、患者さんの急病や急変時に、患者さんが速やかにアクセスできる医療機関で対面診療を行える体制を整えなければなりません。

診療情報の安全管理・セキュリティ要件

オンライン診療は、情報通信機器やインターネットを介して患者さんの個人情報や医療情報をやり取りするため、情報流出やハッキングなどによる漏洩に備えた対策が求められます。

使用するシステムに関しては、厚生労働省や総務省・経済産業省が定めるガイドラインを踏まえた対策を講じる必要があります。

具体的な対策は次のとおりです。

  • OSやソフトウェアを適宜アップデートする
  • 必要に応じてセキュリティソフトをインストールする
  • 多要素認証を用いる

また、オンライン診療に携わる医師は、研修などに参加しセキュリティリスクに関する情報を適宜アップデートするよう指針に記載されています。

なお、なりすまし防止および患者さんが医師の本人確認を行えるよう、顔写真付きの身分証明書と医籍登録番号を常に確認できる機能を備えることも求められます。

これは患者さんの本人確認についても同様で、顔写真付きの身分証明書での本人確認を行う必要があります。

参照:『オンライン診療の適切な実施に関する指針』(厚生労働省)

オンライン診療でできることとできないこと

オンライン診療でできることとできないこと

オンライン診療はすべての診療ができるわけではありません。ここではオンライン診療でできることとできないことを具体的に解説します。

オンライン診療で可能なこと

オンライン診療は、指針を適切に遵守したうえで、診察、診断、処方といった一連の診療行為を行うことができます。

初診も一定の要件を満たせば実施可能です。

初診は原則としてかかりつけの医師が行うこととされています。かかりつけの医師以外の医師がオンライン診療で初診を行う場合は、過去の診療記録、診療情報提供書、健康診断の結果、地域医療情報ネットワーク、お薬手帳などから診療開始に十分な医学的情報を得られる場合に限られます。

また、オンライン診療は薬の処方も可能ですが、安全性の観点から一定の制限があります。

初診の場合、麻薬および向精神薬の処方は行えません。また、基礎疾患などの情報が把握できていない患者さんに対しては、特に安全管理が必要な薬剤や、8日分以上の薬剤の処方は行わないこととされています。

参照:『オンライン診療の適切な実施に関する指針』(厚生労働省)

オンライン診療で難しいこと

オンライン診療は、対面診療と比べていくつもの制約があります。

大きな制約は、直接身体診察ができないことです。触診、打診、聴診などができないため、得られる医学的情報が限られます。

視診についても画面越しとなるため、対面診療とまったく同等とはならない場合があります。日本医学会連合の提言では、問診と画面越しの動画のみで診断を確定することのできる疾患はほとんどないと指摘されています。特に、急性の腹痛、胸痛、呼吸困難など、緊急性が高い症状は、対面診療を行う必要があります。

参照:『オンライン診療の初診に関する提⾔』(⽇本医学会連合 )

オンライン診療を始めるための準備

オンライン診療を始めるための準備

オンライン診療を導入する医療機関は、法的な要件を満たすために必要な機器・環境の整備と、適切なシステム選定を行う必要があります。

オンライン診療に必要な機器・環境

オンライン診療を開始するには、まず適切な機器と通信環境を整える必要があります。

医師側に必要な機器は、ビデオ通話が可能な端末です。パソコン、タブレット、スマートフォンなどが使用できます。さらに、安定したインターネット環境が不可欠です。

診療を行う場所の環境も重要です。

音声が聞き取れない場所や、ネットワークが不安定な場所では診療を行ってはならないとされています。また、プライバシー保護の観点から、第三者に患者さんの情報が伝わることのない空間で診療を行うことが求められます。

参照:『オンライン診療の適切な実施に関する指針』(厚生労働省)

オンライン診療システムの選定ポイント

オンライン診療システムは、医療機関の運用形態に適しているかと、厳格な法的・セキュリティ要件を満たしている必要があります。

まず、ビデオ通話が安定した環境で問題なく行えるかを確認します。次に、予約管理、問診票の記入、決済、処方せん送付などの機能が含まれているかを確認します。電子カルテなど既存のシステムとの連携が可能かどうかもチェックしましょう。

システム選定においては、厚生労働省の指針やガイドラインの要求事項を満たしているかが重要なポイントです。

セキュリティに関して、患者さんの情報を保護するために通信経路が適切に暗号化されていること、およびデータ保護体制が確立されていることが必要です。

また、医師やスタッフの利用者認証が厳格に行える機能(多要素認証)や、個人情報保護法に準拠していることも確認します。実際の運用に関して、使いやすさやサポート体制などもチェックしましょう。

オンライン診療を導入するための具体的な手続き

オンライン診療を導入するための具体的な手続き

オンライン診療を導入するための具体的な手続きを解説します。

保健所・行政への届出

オンライン診療を開始する際、保健所への特別な届出は基本的に不要です。ただし、診療報酬を算定するためには、地方厚生局への施設基準の届出が必要になります。また、オンライン診療を開始後は、前年度の診療実績を届け出る必要があります。

オンライン診療を実施するための院内体制の整備

オンライン診療を円滑に実施するために、まずは医師が厚生労働省の定める指針やガイドラインを理解しておく必要があります。

次に重要なのが、スタッフへの教育です。オンライン診療の流れや使用するシステムの操作方法、患者さんへの説明方法などを、看護師や受付スタッフも把握できるように準備します。オンライン診療を担当する医師は、厚生労働省が定めるオンライン診療研修を修了することが求められています。

診療計画の作成も重要な準備の一つです。患者さんごとに診療計画を作成し、患者さんの同意を得る必要があります。作成した診療計画は2年間保存することが義務づけられています。

参照:『オンライン診療の適切な実施に関する指針』(厚生労働省)

患者さんへの説明と同意取得のプロセスも整備しておきます。オンライン診療の利点と制約、緊急時の対応方針、セキュリティリスクなどについて、患者さんに十分に説明し、理解と同意を得ることが重要です。

また、緊急時の対応についても前もって確認しておく必要があります。オンライン診療中に患者さんの容態が急変した場合や、対面診療が必要と判断した場合に、速やかに対応できる体制を整えます。

診療報酬算定の準備

情報通信機器を用いた初診料について、施設基準の届出を行った医療機関では253点を算定することが可能です。医学管理料についても、オンライン診療で算定できるものが定められています。

算定にあたっては、診療報酬点数表や通知を確認し、不明な点があれば地方厚生局に問い合わせるとよいでしょう。

参照:『令和6年度診療報酬改定 【全体概要版】』( 厚生労働省保険局医療課)

患者さんへの情報発信の準備

医療機関のホームページがあれば、オンライン診療を実施していることを掲載しましょう。また、院内での掲示も効果的です。待合室や受付にポスターを掲示したり、リーフレットを配置したりすることで、来院した患者さんにオンライン診療の存在を知らせることができます。

まとめ

オンライン診療は、情報通信技術を活用した新しい診療形態として、患者さんの利便性向上や医療アクセスの改善に貢献する可能性を持っています。

しかし、適切に実施するためには、厚生労働省が定める指針やガイドラインに従い、法的要件を満たす必要があります。導入にあたっては、適切な機器と通信環境を整え、自院に合ったオンライン診療システムを選定します。

安全でスムーズなオンライン診療が提供できるよう、十分な準備と運用体制の整備を行いましょう。