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クリニックの開業規制とは?押さえておきたいルールと今後の動向を解説

                   
投稿日: 2026.04.18
更新日:2026.04.11
                   

クリニックを開業する際には、開業に関する規制など多くの注意すべき点があります。医療法をはじめとするさまざまな法令に基づいた手続きと規制が存在するため、これらを事前に正しく理解しておくことが重要です。本記事では、クリニック開業に関わる規制や押さえておきたいルールなどを解説します。

クリニック開業に関わる規制の全体像

クリニック開業に関わる規制の全体像
クリニックを開業する際にどのような規制がありますか?

クリニック開業に関わる規制は、大きく次の5つに関するものに分けられます。

  • 開設手続き
  • 施設・設備
  • 診療科目
  • 広告・情報発信
  • 保険診療

クリニックは、保健所への届出や許可なしに開業することはできず、施設・設備についても診察室の広さや換気・採光など、法令で定められた基準を満たす必要があります。また、標榜できる診療科名や、ホームページ・SNSを含む広告表現も医療法の規制対象です。保険診療を行う場合には、別途、保険医療機関の指定申請が求められます。

これらの規制は開業前から開業後まで継続して適用され、対応が不十分な場合、開業の遅延や行政指導につながるおそれがあります。

クリニックの開業自体が制限されることはありますか?

診療所の開設手続きは、開設者の種別や病床の有無によって届出制と許可制に分かれます。個人の医師が入院病床を持たない診療所(無床診療所)を開設する場合は届出制です。一方で、医療法人などの法人が開設する場合や、個人であっても有床診療所を開設する場合は、事前に知事の許可申請が必要です。

ただし、開業できる者には一定の制限があります。医療法では、営利を目的として診療所を開設しようとする者には許可を与えないことができると規定されています。また、地域医療の偏在問題への対応として、外来医師が集中している地域(外来医師過多区域)での新規開業者に対しては、在宅医療や初期救急対応など地域で不足する医療機能を担うよう求める仕組みが設けられています。開業する場所によっては一定の義務が生じる可能性があります。

近年、クリニック開業を取り巻くルールはどのように変化していますか?

近年、クリニック開業を取り巻くルールの大きな変化がありました。特に注目すべきは、医師の偏在対策を目的として成立した、医療法等の一部を改正するための法律です。

外来医師過多区域で新規開業する医師に対して、開業の6ヶ月前までに届け出ることとなりました。これは2026年4月から施行される予定です。また、その地域で不足している在宅医療や初期救急対応などの医療機能を担うよう、都道府県知事から要請や勧告を受ける場合があります。

開業前に確認すべき法的規制

開業前に確認すべき法的規制
診療所の開設にはどのような届出や許可が必要ですか?

診療所の開設手続きでどのような届出や許可が必要かは、開設者の種別と病床の有無によって以下の3パターンに分かれます。まずは、個人の医師が無床診療所を開設する場合です。医療法第8条に基づき、開設した日から10日以内に管轄の保健所に診療所開設届を提出します。届出には、開設者・管理者の医師免許証の写しや臨床研修等修了登録証の写し、建物の平面図、敷地の見取り図などが必要です。

次に、個人の医師が有床診療所(1〜19床)を開設する場合です。入院施設を伴うため、構造設備などの審査が必要となり、事前に医療法第7条第1項に基づく診療所開設許可の申請が必要です。許可取得後に実際に開設した日から10日以内に開設届を提出します。そして、医療法人などの法人が診療所を開設する場合は、病床の有無に関わらず事前に知事への許可申請が必要です。なお、保険診療を行う場合は、開設届の受理を経たうえで、所轄の地方厚生局に保険医療機関指定申請を行う必要があります。

建物や設備に関して注意すべき規制を教えてください

建物や設備に関する規制の中心となるのが、医療法施行規則第16条に規定される構造設備基準です。これはクリニックの建物が医療を提供する場として適切かどうかを担保するものです。クリニック開設の届出・許可を受けるためには、この基準を必ず満たしている必要があります。

建物は、医療法で規定された構造設備基準を満たす必要があります。診察室の面積は9.9平方メートル以上が求められます。換気・採光・照明・防湿・清潔保持などに関しても基準が定められています。また、クリニックの施設は建築基準法上、特殊建築物として扱われるため、消防設備や避難経路の確保など防火・安全面に関する法令にも対応しなければなりません。

X線装置を設置する場合は、放射線防護のための壁の鉛厚さを示した図面が必要で、設置後10日以内に届け出ます。有床診療所については、さらに詳細な設備基準が定められています。なお、多くの自治体ではバリアフリー化も求められています。

診療科目や標榜や診療内容に関する規制やルールはありますか?

標榜できる診療科名は、医療法で定められており、内科・外科・精神科・小児科・皮膚科・泌尿器科・産婦人科・眼科・耳鼻いんこう科・リハビリテーション科・放射線科・救急科・麻酔科などが単独で標榜可能な基本的な科名として規定されています。2008年4月からは、これらの科名に身体の臓器・部位(消化器、循環器など)や患者さんの特性(小児など)を組み合わせた消化器内科、小児眼科、などの標榜も認められるようになりました。

ただし、麻酔科のみは特別に許可制となっており、麻酔科を標榜するためには、担当医師が厚生労働大臣の許可(麻酔科標榜許可)を取得する必要があります。

開業後の運営に関する規制と注意点

開業後の運営に関する規制と注意点
広告やホームページへの表記にはどのような規制がありますか?

医療機関の広告については、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)が定められています。広告可能な事項が限定されています。2018年の医療法改正以降、クリニックのホームページもほかの広告媒体と同様に規制の対象となりました。

特に禁止される広告として、虚偽広告(事実に基づかない表現)、誇大広告(客観的根拠のない最大級表現)、患者さんの体験談や施術前後の写真の無断掲載などが挙げられます。

SNSなどを活用した情報発信も医療広告規制の対象となるため、クリニックのSNS運用でも十分な注意が必要です。

なお、ホームページが広告と判断されるかどうかは誘引性が判断基準となります。誘因性とは、患者さんを特定の医療機関に誘引する意図があるかどうかです。検索広告やバナー広告と組み合わせた場合は広告規制の対象となります。規制に違反した場合は是正命令の対象となるほか、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。

人材採用や勤務体制に関して注意すべき法令を教えてください

人材採用や勤務体制に関して注意すべき法令は、主に次の3つです。

  • スタッフ全般に適用される労働基準法
  • 医師の長時間労働を制限する医師の働き方改革に関する法令(医療法・労働基準法の特例)
  • 看護師や医療事務などの採用時に関わる雇用関係法令(労働契約法・パートタイム労働法など)

労働基準法では、原則として1日8時間、週40時間を超える労働時間は禁止されており、超過した分については残業代の支払いが義務づけられています。ただし、常時従業員が10名未満の場合は、特例措置対象事業所として1週間の労働時間を44時間まで設定できる例外措置があります。

なお、2024年4月からは医師にも時間外労働の上限規制(原則年960時間)が適用されました。看護師・スタッフについても36協定(時間外労働に関する労使協定)の締結や変形労働時間制の活用など、クリニックの診療体制に合わせた柔軟な勤務管理が必要です。

診療報酬や保険診療のルールは開業後の経営に影響しますか?

診療報酬や保険診療のルールは、開業後の経営に影響します。保険診療を行うクリニックにとって、診療報酬は収益の根幹を成す仕組みです。診療報酬は原則として2年ごとに改定されます。2024年度(令和6年度)は、医療・介護・障害福祉の3制度が同時に改定されました。

また、2025年12月成立の改正医療法では、外来医師過多区域において新規開業後に地域医療への貢献要請に応じない場合、保険医療機関の指定期間が通常の6年から3年以内に短縮される措置が盛り込まれました。保険診療の継続性が経営の安定に直結するため、地域医療への貢献と経営上の要件を両立させる視点が今後ますます重要になると考えられます。

編集部まとめ

編集部まとめ

クリニックの開業には、開設手続きや施設・設備基準、診療科目の標榜、広告規制、保険診療制度など、さまざまな規制が関わります。近年は医師偏在対策を背景に、開業ルールも見直されており、制度動向への理解が欠かせません。開業を円滑に進めるためには、最新の法令や自治体の運用を確認し、計画的に準備を進めることが重要です。