クリニックにおける赤字経営の実態と失敗を回避する方法をわかりやすく解説
令和6年度の調査では、約4割のクリニックが赤字経営とされています。早期に対策を立てなければ資金不足となり廃業につながるおそれがあります。
本記事では、クリニックの赤字経営の実態や赤字に陥る理由、開業前・開業後の備えなどを解説します。
クリニックにおける赤字経営の実態

- 赤字経営のクリニックはどの程度存在しますか?
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令和6年度のデータによると、診療所の経営状況は前年度と比べて大きく悪化しています。医療法人の医業利益率は6.7%から3.2%へ低下し、経常利益率も8.2%から4.2%へとほぼ半減しました。
さらに、令和6年度の調査では、医業利益で約45%、経常利益でも約39%の診療所が赤字でした。
人件費や物価の上昇、患者数の変動など複数の要因が重なり、クリニックの経営はさらに厳しくなっています。参照:『令和7年 診療所の緊急経営調査 結果』(日本医師会)
- クリニック開業直後から黒字化するケースがありますか?
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一例として、下記の条件が重なると、開業初月〜数ヶ月で黒字化できる可能性があります。
- 既存患者さんの引き継ぎがある承継開業
- 立地がよく、初月から予約が埋まりやすい診療科
- スタッフ配置・診療時間が最適化されている
- 自費診療を行っている
- クリニック開業直後から黒字化するケースがありますか?
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一例として、下記の条件が重なると、開業初月〜数ヶ月で黒字化できる可能性があります。
- 既存患者さんの引き継ぎがある承継開業
- 立地がよく、初月から予約が埋まりやすい診療科
- スタッフ配置・診療時間が最適化されている
- 自費診療を行っている
- 開業前に想定しておくべき赤字期間を教えてください
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最低3〜6ヶ月、慎重に見るなら6〜12ヶ月です。
新規開業で患者数が増えるまでに時間がかかる場合や、設備投資や人員配置が多く必要な診療科、広告投資を前倒ししない方針の場合は、12ヶ月程度まで見ておくと資金計画が安定します。 - 黒字経営でも資金繰りが苦しくなることはありますか?
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保険診療は入金が後ろにずれやすく、売上が立っていても入金までタイムラグがあります。しかし、人件費・家賃・リース・委託費は毎月先に出ていきます。加えて、賞与や税金の支払い、機器更新・内装補修などの一時支出が重なると、黒字でも一時的に手元資金が少なくなります。
- 赤字経営に陥りやすいクリニックにはどのような特徴がありますか?
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売上が伸びにくく、固定費が高止まりしているクリニックは赤字になりやすい傾向があります。
来院数が季節や競合の影響を受けやすいにもかかわらず、家賃やリース、人件費などの固定費が高い場合、患者数が少し減っただけで赤字に陥ります。
診療報酬改定の際に、算定要件を満たすために人員配置や体制整備などの追加コストがかかり、赤字のリスクが高まる場合もあります。
さらに、物価や賃金が上がっている時期でも、保険診療中心の医療機関は値上げができないため、利益が圧迫されがちです。
医療DXも、導入後のメンテナンス費や月額費用がかかる一方で、予約枠の回転率向上や残業削減などの運用改善につながっていないと、コストだけが増えます。 - クリニックが赤字化する要因を教えてください
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赤字は、患者数の減少・単価の伸び悩み・コスト増が重なったときに起こりやすくなります。
人口減少により地域全体の患者数が減る可能性があることに加え、近隣の新規開業や大規模医療機関の外来強化で患者さんが分散すると、想定した来院数を下回ります。
保険診療中心だと単価を自由に上げられないため、加算の設計や算定漏れ防止、返戻への対策が弱いと「診療はしているのに収益が残らない」状態に陥りやすくなります。
コスト面では、物価高騰に伴う委託費・材料費・光熱費の上昇に加え、人材確保のための賃上げ、採用費や人材紹介料の上昇、医療DX導入・保守費の増加などが重なりやすい状況です。 - クリニック経営でコストが高くなりやすい費目は何ですか?
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コストが高くなりやすいのは、固定費化しやすいものと外注・月額課金化しやすいものです。最も影響が大きいのは人件費で、給与だけでなく社会保険、賞与、残業、各種手当など、さまざまなコストがかかります。
採用難の場合は、求人広告費や人材紹介料が膨らみます。
医療DX関連は、電子カルテ、予約・WEB問診、レセプト、オンライン資格確認周辺、セキュリティ、保守・連携費などが固定費化しやすく、効果が十分ではないと赤字の原因になることがあります。
医療機器も、購入・リースに加えて更新費や保守費がかかり、更新期が重なると利益を圧迫します。
委託費は、検査委託、清掃、医療廃棄物、警備、会計・労務などの費用が代表例で、物価上昇局面で上がりやすい項目です。参照:『医療機関等を取り巻く状況について』(厚生労働省)
- 赤字を前提にした資金計画は必要ですか?
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現在のように物価・賃金が上がり、価格転嫁が難しい状況では、黒字前提の計画を立てるのは危険です。
人口減少で患者数が減る可能性も踏まえると、一定期間は計画より患者数が下振れすることを前提に、運転資金の厚み、返済開始のタイミング、資金繰りが悪化した場合の追加調達手段を組み込むのが現実的です。
経営が悪化した場合の支援制度もあるため、あらかじめ把握しておくことが大切です。 - 開業前に準備しておきたい赤字対策を教えてください
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開業前に準備したい赤字対策は、損益分岐点を下げるとともに、売上を早期に増やし、資金ショートを防ぐ施策を立てることです。
損益分岐点を下げるために、家賃やリース、スタッフ構成を、患者数が想定より少ない場合でも耐えられる水準にすることが重要です。
人件費は、常勤スタッフを多く抱えすぎないことが大切です。忙しい時間帯に合わせて非常勤スタッフを活用し、仕事の内容を整理して少ない人数でも運営できる体制を作ります。
売上面では、本来算定できる診療報酬を確実に請求することが重要です。加算の条件や記録の書き方、同意書や検査の流れを統一しておくと、算定漏れや返戻を減らすことができます。
資金繰りでは、毎月必ず出ていくお金を正確に把握します。家賃、人件費、リース代、外注費、システム利用料などを合計し、その数ヶ月分を事前に確保しておきます。また、借入金の返済がいつ始まるのかも含めて、無理のない計画を立てましょう。 - 赤字化した場合はどのような対策がありますか?
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赤字になった場合は、資金不足に陥らないように、支払い猶予や借入の返済条件の見直しを金融機関に相談する必要があります。
次に、売上を底上げします。いきなり患者数を大きく増やすのは難しいため、請求漏れや返戻を減らすところから始めます。
算定漏れや返戻を減らす、予約の入れ方を見直す、再診につながるフォローを強化するなどの方法があります。
さらに、クリニックの体制そのものも見直しましょう。人手不足や人件費の上昇が続くことを前提に、業務の無駄を減らし、デジタル化で効率を上げます。参照:『医療機関等をとりまく状況(経営状況・人材確保等)』(厚生労働省)
赤字化しやすいクリニックに共通する特徴

開業前に考えておきたい赤字対策のポイント

編集部まとめ

赤字は、患者数の伸び悩みだけでなく、人件費や物価の上昇、医療DX関連コスト、診療報酬と実コストのミスマッチなど、さまざまな要因が重なって起こります。
そのため、損益分岐点を下げる工夫をしつつ運転資金を十分に確保し、算定漏れ防止や業務効率化にも取り組むことが大切です。早めに備えることが黒字経営につながります。




