TOP > 開業医の年収・お金に関する話 > 病院長の年収は高い?仕事内容や開業医との比較についても解説!

病院長の年収は高い?仕事内容や開業医との比較についても解説!

                   
投稿日: 2024.06.29
更新日:2024.07.03
                   

病院長の年収は、一般の医師と比べてどのくらい高いのでしょうか。病院の経営責任者である病院長は、医療の質の向上と経営の安定化という重要な役割を担っています。この記事では、病院長の年収や仕事内容について詳しく解説するとともに、開業医との比較も行います。病院長を目指す医師や、開業を検討している医師の方は、ぜひ参考にしてみてください。

医師の年収

医師全体の年収はどれくらいですか?

医師の平均年収は勤務先の規模によって差があります。2019年の統計によると、施設規模10人以上の医療機関に勤務する医師の平均年収は約1580万円でした。規模別に見ると、10〜99人の医療機関で働く医師の平均年収が最も高く、約1900万円となっています。一方、1000人以上の大規模医療機関に勤務する医師の平均年収は約1420万円と、やや低めの傾向が見られます。

(出典:賃金構造基本統計調査 |政府統計の総合窓口(e-Stat)

病院長の年収はどれくらいですか?

病院長の平均年収は、一般の医師と比べてかなり高くなる傾向にあります。2019年の調査では、病院長の平均年収は約2670万円でした。この金額は、基本給と賞与を合わせたものです。単純に基本給だけで計算しても、病院長の平均年収は約2500万円になります。一般的な医師の平均年収と比べると、病院長の収入の高さがよく分かるのではないでしょうか。
(出典:第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告

医療機関の種類によって病院長の年収はどれくらい変わりますか?

病院長の平均年収は、勤務先の医療機関の種類によっても大きな差が見られます。2019年の調査結果を見ると、医療法人の病院長の平均年収が最も高く、約3040万円でした。次いで、法人その他全体が約2670万円、公的医療機関が約2240万円と続きます。一方、国立医療機関の病院長の平均年収は約1920万円と、ほかの区分と比べてやや低めです。

また、医療法人の場合、MS法人(メディカルサービス法人)を設立して利益を移転させているケースがあるため、実際の年収はさらに高くなる可能性があります。MS法人を活用することで、事業承継の際の相続税対策や、家族への役員報酬による所得分散などのメリットを得ることができます。

(出典:第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告

病院長の仕事と目指す方法

病院長の仕事と目指す方法
病院長の仕事について教えてください。

病院長は、病院全体の経営方針や運営に関する重要な意思決定を行う立場にあります。病院長の主な役割は、中長期的な経営計画の立案、収支管理や財務状況の把握、設備投資や人材育成の方針決定など、病院の経営戦略の策定と実行に深く関わることです。また、医療の質と安全性の確保も病院長の重要な責務です。医療安全管理体制の構築と運用、医療事故や院内感染対策の推進、医療スタッフの教育・研修の充実などに取り組む必要があります。

さらに、病院長は医療安全委員会や感染対策委員会など、院内の重要な会議に出席し、問題点の把握と解決策の検討および実行を行います。対外的には、地域医療機関や行政との連携強化、医療事故発生時の対応と情報公開、メディア対応や広報活動の統括なども病院長の役割です。加えて、病院長は医師としての診療業務も継続し、専門分野における診療を行いながら、新たな医学知識の習得と活用も求められます。

病院長は、これらの多岐にわたる業務を遂行しながら、リーダーシップを発揮して組織を束ねていく必要があります。また、問題が発生した際には最終的な責任を負う立場でもあるため、高いストレス耐性と意思決定能力が求められます。

病院長を目指すにはどのような方法がありますか?

病院長を目指すには、大きく分けて2つの方法があります。

・勤務医として病院長を目指す

現在勤務している病院で、キャリアを積み重ねていく方法です。副院長や診療部長などの管理職を経験し、徐々に経営に関わる業務を担当していきます。現院長の後任として選ばれるためには、医師としての実績だけでなく、リーダーシップや調整能力も重要です。同じ法人内の別の病院や分院の院長として抜擢されるケースもあります。

・開業して自分の病院を経営する

自ら病院を開業することで、自動的に院長になることができます。ただし、開業にはかなりの初期投資が必要で、経営能力も問われます。診療科目によっては、数千万円から1億円以上の資金が必要になることもあります。開業までには、資金調達や物件探し、スタッフの採用、各種手続きなど、入念な準備が欠かせません。医師としての経験に加え、経営やマネジメントに関する知識を身につけておくことが重要です。

病院長を目指す際は、自分の適性やキャリアプラン、ライフスタイルなどを総合的に考慮して、最適な方法を選択することが大切です。どちらの方法を選ぶにしても、日頃から経営感覚を磨き、リーダーシップを発揮する機会を積極的に求めていくことが必要です。

 

雇われ病院長か開業医か

雇われ病院長のメリットとデメリットを教えてください。

雇われ病院長になることのメリットとしては、自ら多額の開業資金を用意する必要がなく、病院経営のノウハウを学べることが挙げられます。医師としての業務をきちんとこなしていれば、一般の勤務医よりも良い待遇で安定した収入を得られるでしょう。また、集患や売上げに過度にこだわる必要がないため、開業に向けた一つのステップとして経験を積むこともできます。

一方、デメリットとしては、問題が発生した際に管理医師として医療法上の責任を問われる可能性があることです。最悪の場合は解雇されることもあり、そこから再起を図るのは容易ではありません。また、病院によっては医薬品や医療機器の購入決定権、人事権が与えられないこともあります。事実上の権利者がいる場合、人間関係が複雑になることもあるでしょう。

さらに、医師としての通常業務と管理職としての業務を兼任するため、体力的にもかなりハードになります。経営者としての判断力や、様々な業種の人々とのスムーズな連携も求められます。加えて、雇われ病院長には定年があるため、いつかは院長の座を譲らなければならず、その後は年収が下がることは避けられません。

開業医のメリットとデメリットを教えてください。

開業医のメリットとしては、まず、病院やクリニックの理念や経営方針を自分で決められることが挙げられます。これまで勤務先の病院と診療方針が合わなかった医師にとって、自分の理想に沿って方向性を決められるのは大きな喜びでしょう。また、営業時間や休診日を自由に設定できるため、ワークライフバランスを取りやすいことも魅力の一つです。

金銭面でも、開業医の収入は勤務医の1.7倍以上になると報告されています。経営が軌道に乗れば、収入の大幅アップが期待できます。さらに、開業医には定年がないため、体力と気力があれば何歳になっても院長を続けられます。経営が安定していれば、自由に使えるお金は雇われ院長よりも多くなるでしょう。

一方で、デメリットとしては医学知識とは全く異なる経営手腕が求められることが挙げられます。設備投資や備品購入、人件費、広告費など、多額の開業資金を用意する必要があります。開業後も医療機器の故障や買い替えに多くの費用がかかるため、十分な運転資金の準備も大切です。

また、開業しても集患が上手くいかなければ、精神的な負担は大きくなるでしょう。経理や経営に関する知識や、頼れるビジネスパートナーの存在が安心材料になるかもしれません。さらに、ほかに常勤の医師を雇用していない場合、代診を頼むことができず、患者さんに迷惑をかけてしまう可能性もあります。

編集部まとめ

病院長の年収は、一般の医師と比べてかなり高く、平均で約2670万円にのぼります。ただし、病院長の仕事は経営方針の決定から医療の質の確保まで多岐にわたり、重大な責任を伴います。病院長を目指す方法には、勤務医として昇進していく道と、自ら開業する道の2つがあります。どちらを選ぶにしても、医師としての実力だけでなく、リーダーシップや経営能力が求められます。雇われ病院長と開業医にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、自分の適性やキャリアプランに合わせて慎重に選択することが大切です。