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医療法人を設立して診療を開始するまでの手続きと流れとは?医療法人化するための要件についても解説!

                   
投稿日: 2024.07.16
                   

医療法人の設立には、さまざまな要件や手続きが必要であり、一般の法人と比べるとやや複雑です。そこで本記事では、医療法人化するための要件や、医療法人の設立から診療開始までの一連の流れについて、分かりやすく解説していきます。これから医療法人の設立を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

医療法人について 

まずは、医療法人の基本的な概念や種類、そして医療法人化によるメリットとデメリットについて解説します。

 医療法人とは

医療法人とは、医療を提供することを主たる目的として設立された法人のことを指します。医師や歯科医師などが個人で開業するのではなく、法人という形態で医療機関を運営するのが医療法人です。営利を目的とせず、医業収益を医療の充実や医療従事者の処遇改善に充てることを求められるのが特徴です。

 医療法人の種類

医療法人には、以下のような種類があり、それぞれ設立要件や運営方法に違いがあります。

・医療法人社団

医療法人社団は、社員の合意によって設立される法人です。社員の出資持分の有無によってさらに2つに分けられますが、現在は持分の定めのない医療法人のみ設立可能です。医療法人社団は平成31年時点で医療法人全体の99%を占めており、新たに医療法人を設立する際は医療法人社団を設立することが基本になっているといえます。

種類別医療法人数の年次推移|厚生労働省

・医療法人財団

医療法人財団は、拠出された財産を基に設立される法人です。社団とは異なり、社員は存在せず、理事会で意思決定を行います。剰余金の配当や残余財産の分配は行われません。

・社会医療法人

公益性の高い事業を行う医療法人に対して認定されます。救急医療や災害時医療など、地域に必要な医療提供体制の確保に貢献することが求められます。設立には都道府県知事の承認が必要です。

・特定医療法人

平成16年の医療法改正前に設立された医療法人で、特定の要件を満たした法人に対して認定されます。持分あり医療法人ではありますが、一定の非営利性が求められます。国税庁長官の承認が必要です。

 医療法人化のメリット・デメリット

医療機関を個人経営から医療法人化することには、いくつかのメリットがあります。まず、所得税と法人税の税率差を活用することで、節税効果が期待できます。また、所得を理事長、理事、医療法人に分散させることで、事業所得税の軽減が図れます。さらに医療法人化によって、生命保険料など損金として認められる支出が増えるというメリットもあります。

医療法人では欠損金の繰越控除期間が9年間と、個人事業主の3年間と比べて長くなります。社会保険診療報酬に対する源泉徴収がなくなるのも、医療法人化のメリットの一つです。加えて、分院の開設や介護老人保健施設の設置・併設がしやすくなるため、事業拡大が図りやすくなります。役員退職金を受け取ることができるのも、医療法人化の大きな魅力と言えるでしょう。

一方で、医療法人化にはデメリットもあります。医療法人が解散した際、残余財産は国等に帰属することになるため、個人に分配されることはありません。また、事務手続きが複雑化するのもデメリットの一つです。決算書や事業報告書の提出、登記など、個人事業主のときよりも煩雑な手続きが必要となります。

さらに医療法人では、剰余金の配当が禁止されているため、出資者への利益配分ができません。地方税(均等割)の負担も発生します。接待交際費の損金算入には制限があり、個人事業主の場合と比べて不利になる場合があります。さらに、役員や従業員として厚生年金の加入が必要になるため、個人事業主のときよりも社会保険料の負担が増える可能性があります。

医療法人化するための要件 

医療法人を設立するためには、さまざまな要件を満たす必要があります。ここでは、医療法人化に必要な人的要件、資産要件、設備要件、そのほかの要件について詳しく解説します。

 人的要件

医療法人には、一定数の社員と役員が必要とされています。具体的には、社員が3名以上、役員として理事が3名以上(理事長を含む)、監事が1名以上いることが求められます。

社員は、医療法人の構成員であり、社員総会で重要な意思決定に参加します。一般的な法人の正社員とは異なり、どちらかというと株主に近い存在です。理事は、医療法人の業務執行を担う役員であり、理事会で決定された方針に基づいて法人の運営にあたります。監事は、理事の業務執行を監査する役割を担います。

 資産要件

医療法人の運営に必要な運転資金として、年間支出予算の2カ月分以上の資金を確保しておく必要があります。これは、医療法人の日常的な運営に要する資金を賄うためのものです。また、個人開業時代に使用していた医療機器や設備を医療法人に引き継ぐ場合は、それらを買い取るための資金も別途用意しなければなりません。

さらに、医療法人が使用する土地や建物については、原則として医療法人の所有となっていることが求められます。もし賃貸物件を使用する場合は、長期的な賃貸借契約が担保されている必要があります。これは、医療法人の事業継続性を確保するためです。

 設備要件

医療法人は、1カ所以上の病院、診療所、または介護老人保健施設を開設していることが求められます。これらの施設では、医療法人の目的に沿った医療サービスが提供されなければなりません。また、各施設には、医療行為を行うために必要な設備や器具が適切に配置されている必要があります。

 そのほかの要件

人的要件、資産要件、設備要件以外にも、医療法人化にあたってはいくつかの要件があります。

まず、医療法人の名称については、既存の法人と同一または類似の名称を使用してはいけません。名称から医療法人の事業内容が明確に分かるようにする必要もあります。わかりにくい名称や、誇大広告につながるような名称は避けなければなりません。

医療法人が2つ以上の医療施設を開設する場合、各施設の管理者は独立した立場であることが求められます。つまり、法人の理事長と各施設の管理者との間に、事実上の雇用関係があってはいけません。これは、各施設の管理者が独自の判断で施設運営にあたれるようにするための要件です。

医療法人の設立に必要な主な手続きと流れ 

医療法人を設立するためには、さまざまな手続きを踏まなければなりません。ここでは、医療法人の設立に必要な主な手続きと、その流れについて詳しく解説します。

 設立事前協議の実施

医療法人の設立にあたっては、まず都道府県との設立事前協議を行います。この事前協議は、医療法人設立の仮申請とも呼ばれ、設立認可申請書を都道府県に提出し、内容の確認や修正、必要な資料の追加などについて協議を行います。

事前協議では、申請書類の内容だけでなく、医療法人設立の詳細について審査が行われます。都道府県は、保健所などの医療機関に照会し、申請者である医師に対する面接を実施することもあります。

 設立説明会への参加

多くの都道府県では、年に2回程度、医療法人設立説明会を開催しています。この説明会では、医療法人の設立に関する基本的な情報や、申請手続きの詳細について説明が行われます。説明会への参加は、医療法人設立を円滑に進める上でとても有益です。

近年では、オンラインでの説明会開催も増えています。自身のスケジュールや都合に合わせて、参加方法を選択するとよいでしょう。

 定款の作成

医療法人の定款は、法人運営の基本的なルールを定めた重要な文書です。定款には、法人の目的や業務、名称、事務所の所在地、開設する病院や診療所の所在地、資産や会計に関する規定、役員や理事会に関する規定、社員や社員総会に関する規定などを定める必要があります。定款の作成にあたっては、厚生労働省が示している定款例を参考にすると良いでしょう。

 設立総会の開催

定款の作成後は、設立者3名以上による設立総会を開催します。設立総会では、設立趣旨の承認、設立時社員の確認、定款案の承認、基金拠出申込および財産目録の承認、役員および管理者の選任、設立代表者の選任などを行います。

設立総会の議事については、議事録に残す必要があります。議事録には、開催日時や場所、出席者の氏名や住所、議題と決議内容などを記載します。また、病院や診療所の建物を賃貸する場合は、賃貸借契約書の承認も必要です。設立後の事業計画や収支予算、役員報酬の予定額なども、設立総会で承認を得ておく必要があります。

 設立許可申請書の作成

設立総会で必要な事項が承認されたら、医療法人の設立認可申請書を作成し、所轄の都道府県に提出します。設立認可申請書には、事前協議で指摘された箇所を修正し、必要な書類を添付する必要があります。

 設立許可書の受領

設立認可申請書が受理されると、都道府県による審査が行われます。審査では、申請書類の内容だけでなく、代表者への面接や実地調査などが行われる場合もあります。審査を通過すると、都道府県の医療審議会による審査も行われます。

審査に通過し、設立が認可されると、都道府県から設立認可書が交付されます。設立認可書を受領したら、いよいよ医療法人としての活動が始まります。

 設立登記申請書類の作成

設立認可書を受領したら、2週間以内に法人設立登記を行う必要があります。設立登記には、医療法人の名称、目的、業務、理事長の氏名と住所、存続期間、資産総額などを登記する必要があります。従たる事務所を置く場合は、主たる事務所の登記から2週間以内に、別途登記手続きを行う必要があります。

 法務局での設立登記

設立登記申請書類が作成できたら、法務局に提出し、設立登記を行います。設立登記が完了すると、医療法人としての法人格を得ることができます。設立認可書や定款、登記簿謄本などの重要書類は、大切に保管しておきましょう。

 保健所での診療所開設許可の取得

法人設立登記が完了したら、次は診療所開設の許可を得る必要があります。保健所に診療所開設許可申請書を提出し、現地での立ち会い検査を受けます。

診療所開設の許可を得るためには、診療所の施設や設備が基準に適合していることが求められます。事前に保健所の担当者に相談し、必要な準備を整えておきましょう。

 保健所への開設届の提出

診療所開設の許可が下りたら、10日以内に保健所に開設届を提出します。あわせて、医療法人化前の個人診療所の廃止届も提出する必要があります。開設届の提出が完了すれば、医療法人としての診療活動を開始できます。ただし、保険医療機関としての指定を受けるまでは、自由診療のみの実施となります。

 厚生局での保健医療機関指定の取得

医療法人として健康保険診療を行うためには、厚生局から保険医療機関の指定を受ける必要があります。指定を受けると、保険医療機関コードが発行され、健康保険による診療が可能となります。また、個人診療所の保険医療機関廃止届も忘れずに提出しましょう。

医療法人の開業までに必要なそのほかの手続き 

医療法人の設立登記が完了し、保健所での診療所開設許可を取得したら、いよいよ医療法人としての開業準備も大詰めです。しかし、開業までにはまだいくつかの手続きが必要となります。ここでは、医療法人の開業までに必要なそのほかの手続きについて、詳しく解説します。

 銀行口座の名義変更

医療法人として開業するためには、法人名義の銀行口座を開設する必要があります。個人事業の時代に使用していた口座を、法人名義に変更することもできますが、法人と個人の資産を明確に区別するために、新たに法人口座を開設することをおすすめします。

 水道光熱費や電話などの名義変更

医療法人として開業するためには、診療所で使用する電気、ガス、水道、電話などの契約名義を、個人から法人に変更する必要があります。名義変更の手続きは、各事業者によって異なります。

 税務署での手続き

医療法人として開業するためには、税務署での各種手続きが必要となります。主な手続きとしては、個人事業の廃止届、法人設立届、青色申告承認申請、給与支払事務所開設届、源泉所得税の納期特例の承認申請などがあります。

 社会保険診療報酬支払基金での手続き

医療法人として社会保険診療を行うためには、社会保険診療報酬支払基金での手続きが必要となります。主な手続きとしては、保険医療機関の届出や、診療報酬の振込口座の指定などがあります。

 国民健康保険団体連合会での手続き

社会保険診療の場合と同様、医療法人として国民健康保険の診療を行うために国民健康保険団体連合会で手続きします。国保連合会での手続きが完了しないと、国民健康保険による診療収入を得ることができませんので、注意が必要です。

 中小企業事業団での手続き

医療法人化に伴い、中小企業事業団での手続きが必要となる場合があります。例えば、個人事業の時代に加入していた小規模企業共済について、共済金の請求手続きが必要となります。また、中小企業退職金共済に加入している場合は、掛金の変更手続きも必要です。

 医師会への入会

医師会への入会は、医師にとってさまざまなメリットがあります。医師会を通じて、地域の医療関係者とのネットワークを築き、質の高い医療サービスの提供が可能となります。また、医師会主催の研修会や講演会に参加することで、医療技術の向上や医療制度の理解を深められます。さらに、医師会は医師の権利や利益の保護にも尽力しており、医療事故や紛争の際には支援を受けられます。入会手続きは地区医師会によって異なるため、事前の確認がおすすめです。

編集部まとめ

いかがでしたでしょうか。本記事では、医療法人の設立から開業までに必要な手続きや要件について詳しく解説してきました。医療法人化のメリットを活かし、安定的な経営を行うためには、綿密な準備と適切な手続きが欠かせません。医療法人化を検討される際は、まずは自院の現状を見直し、医療法人化のメリットとデメリットを十分に理解することからはじめてみてください。そして、専門家のアドバイスを適切に取り入れながら、医療法人設立に向けた準備を進めていくことをおすすめします。