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整形外科開業はむずかしい?成功するために押さえたいポイントと経営戦略とは

                   
投稿日: 2026.02.03
更新日:2026.01.24
                   

整形外科クリニックの新規開業は設備投資や人員体制の面でハードルが高いかもしれませんが、日本は高齢化が進み、関節痛や腰痛、骨折後のリハビリなど整形外科へのニーズがあります。

需要が高まる一方で、開業には周到な準備と戦略が必要です。

本記事では、整形外科開業で成功するために押さえておきたいポイントについて、立地選びや必要設備、差別化策、経営戦略、開業までのスケジュールにいたるまで解説します。

整形外科のニーズの変化と開業のメリット・デメリット

整形外科のニーズの変化と開業のメリット・デメリット

整形外科クリニックへの需要は、高齢の方の増加に加え、スポーツ障害や若年層の筋骨格系トラブルの増加、特にリハビリや長期通院患者さんが多いことから経営が安定しやすいというメリットがあります。

また、他科に比べ競合が少ない地域もあり、外来診療が中心のため業務効率化や医師の負担軽減も図りやすいという側面もあります。

しかし、X線装置やリハビリ機器などの導入により初期投資が高額になりやすく、リハビリスタッフの採用などで人件費や設備費といった固定コストが重くなるデメリットもあります。

このように、開業には高いハードルがありますが、需要と課題を理解し戦略的に準備することで、安定した経営に結びつく可能性が高い診療科といえます。

整形外科開業で成功するための立地選びのポイント

整形外科開業で成功するための立地選びのポイント

整形外科クリニックの成否はどこに開業するかといった立地選定によって大きく左右されます。立地はターゲットとなる患者層やほかの施設との連携、来院手段にも直結する重要事項です。

ここでは立地選びで注目すべきポイントを3つ解説します。

ターゲット層の分布分析

開業予定エリアでどのような患者層をメインターゲットにするかを明確にし、その分布を分析しましょう。

具体的には地域の人口動態、交通の流れ、競合クリニックの数と特徴を調査します。高齢の方が多い住宅地であれば膝や腰の慢性痛、骨粗しょう症など高齢層ニーズに対応した診療が求められます。逆に若いファミリー世帯が多い地域なら、子どもの外傷やスポーツ障害などにも対応できると強みになります。

リハビリ施設との連携の可能性

地域の医療や介護リソースと連携できる立地かどうかも検討しましょう。

例えば、近隣に介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどがあれば、連携して入所者の診療やリハビリ指導を行うことで患者さんの紹介を受けやすくなります。

また、地域のケアマネジャーや訪問看護ステーションとのネットワークを作り、通院困難な患者さんの情報共有や在宅リハビリへの展開を図ることも可能です。

駐車場の有無が与える影響

駐車場の有無は整形外科の集患に大きく影響します。足腰が不自由な高齢の患者さんも多いため、できるだけクリニック敷地内に複数台分の駐車スペースを確保することが望ましいでしょう。

郊外型で車利用が前提の地域ではもちろん、都市部でも遠方から車で通院したい患者層を取りこぼさないために駐車場の整備も大切です。

整形外科に必要な設備と導入の考え方

整形外科に必要な設備と導入の考え方

整形外科クリニックでは診断から治療、リハビリまで幅広い医療サービスを提供するため、多種多様な医療設備が必要です。

X線やMRIなど画像診断機器の導入判断

画像診断機器は整形外科において必須ともいえる設備ですが、その導入範囲はクリニックの規模や方針によって異なります。

まずX線装置(レントゲン)は整形外科で必須といえる一方、CTやMRIの導入は慎重な判断が必要です。これら装置は高額で、専用の設置スペースや放射線防護工事も必要になるため、導入すれば初期投資が飛躍的に増大します。

新規開業時に揃える場合は、患者数やニーズを事前にシミュレーションし、投資回収の見通しを立てておきましょう。

リハビリ室の広さと設備

リハビリ室は整形外科クリニックの特徴的な施設で、診察室とは別に広めの空間が欠かせません。牽引装置や電気刺激装置、ウォーターベッドなどの物理療法機器を配置するエリアと、平行棒やリハビリ用ベッド、エクササイズ器具などを置くスペースを確保する必要があります。

設備面では、温熱療法用のホットパック装置やマイクロ波治療器、低周波治療器、牽引ベッドなど基本的な物療機器は揃えたいところです。ただし、これらの機器を開業時から揃えるとコストがかさむため、開業当初は必要最低限のリハビリ機器にとどめ、患者さんのニーズに応じて段階的に増設してもよいでしょう。

スタッフ体制と資格者の配置

人的リソースの整備も整形外科開業では重要な課題です。整形外科は、医師や、看護師や受付事務に加えて、放射線技師や理学療法士(PT)など有資格者の採用が必要です。

また、リハビリスタッフの採用も必要で、運動器リハビリテーションを提供するには理学療法士(PT)や作業療法士(OT)といった専門職が欠かせません。保険算定上も、運動器リハビリの施設基準(Ⅰ)ではPTまたはOTを4名以上常勤配置する必要があるなど厳しい条件があります。

動線やバリアフリーなど内装設計のポイント

整形外科クリニックの内装設計では、動線計画とバリアフリー対応が特に重要です。

院内は原則バリアフリー設計とし、入口から各室、トイレに至るまで段差を排し、手すりや滑りにくい床材などで安全を確保します。

特にリハビリ室は、車椅子や歩行器での移動を考慮し、幅広の入口や転倒防止策が必要です。

また、受付から会計まで、患者さんが迷わず移動できるレイアウトを考え、動線が交差しないように配慮します。

整形外科の診療体制と差別化のポイント

整形外科の診療体制と差別化のポイント

整形外科クリニックが地域で選ばれるためには、提供する診療体制の充実と他院との差別化が欠かせません。

運動器リハビリの提供体制

整形外科クリニックの運動器リハビリテーションは、物理療法中心か理学療法士(PT)などによる運動療法を含むかで提供体制が分かれます。

PTやOTによるマンツーマンの運動器リハビリを行うことは、患者満足度向上と診療報酬確保につながるメリットがあります。運動器リハビリに注力することで、慢性疾患に対するかかりつけ医機能を得られるため、差別化しやすくなります。

スポーツ整形外科の専門性

一般整形外科が高齢の方中心なのに対し、スポーツ整形は部活動や競技に励む学生や社会人など若年層からのニーズも取り込めます。自身の専門性や地域性を考慮して、スポーツ整形外科に特化することも差別化の有力な方法です。

慢性疾患と急性疾患どちらに注力するか

整形外科の診療は慢性疾患と急性疾患に大別されます。開業にあたっては、どちらに比重を置くかを明確にするとよいでしょう。

慢性疾患中心の場合、変形性関節症やリウマチなど、患者さんとの長期的な関わりが多くなります。丁寧なフォローや生活指導で信頼を得られれば、患者さんは継続的に通院し、経営も安定しやすいでしょう。

ただし、一人にかける時間が長くなると、回転率を上げにくい側面があります。

一方、急性疾患中心の場合、骨折や捻挫などの外傷に対し迅速な対応が求められます。治療が完了すれば通院が終わるケースが多く、患者さんの入れ替わりは激しくなりますが、対応の速さや治療経験の豊富さを新たな患者さんを呼び込むきっかけにすることができます。

予約システムや電子カルテ連携などのDX化

整形外科クリニックでもデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用が進んでいます。ITツールを導入して診療の効率化や患者サービスの向上を図ることは、競合との差別化に有効です。

若年層を想定している場合は、Web予約システムを導入することで患者さんの利便性が向上するだけでなく、予約にかかる事務作業の負担も軽減できます。

電子カルテは、カルテ記載、レントゲン画像や検査結果との連携、紹介状作成など多機能であり、情報共有の促進とヒューマンエラーの防止に役立ちます。

ただし、複雑な操作が必要なシステムは現場の混乱を招くため、シンプルで直感的に扱えるものを導入し、スタッフ研修を十分に行う必要があります。

整形外科開業の経営戦略

整形外科開業の経営戦略

医療サービスの質を高めることと並行して、経営面での戦略立案もクリニック成功の重要要素です。整形外科クリニックならではの収益モデルや地域ニーズへの対応策、患者満足度向上の取り組みなど、経営を安定させるための視点を押さえておきましょう。

検査・リハビリによる収益モデル

整形外科クリニックの収入源は多岐にわたります。一般的な診察料や処置料に加え、画像検査やリハビリテーションを組み合わせることで収益性を高めることが可能です。前述のとおり、整形外科の診療報酬はリハビリを提供することで一人当たり単価を上げやすい特徴があります。

地域ニーズに合わせた診療方針の考え方

整形外科クリニックの経営戦略を立てる際は、地域のニーズに合った診療方針を打ち出すことが肝心です。

地域住民が求めるサービスを提供できれば、自然と患者さんが定着し経営も安定します。競合医院の状況も踏まえつつ、その地域で高い需要が見込める診療内容を見極めることがポイントです。

また、地域ニーズに合わせるという意味では診療時間や曜日設定も戦略になります。

例えば高齢の方が多い地域では平日昼間の来院が多い一方、都心部で働く若年層を狙うなら夜間診療や土日診療のニーズが高いかもしれません。地域の特徴に応じて通いやすい診療体制を築くことが求められます。

患者満足度向上のための取り組み

患者満足度を高める取り組みは、リピーター確保や紹介に直結する重要な経営戦略です。

まず、待ち時間の短縮や快適な院内環境づくりが基本です。前述した予約システムの導入やスタッフ増員によるスムーズな診療進行、待合室の座席数確保や空調や清掃の行き届いた空間整備など、患者さんが「また来たい」と思える環境を整えましょう。

次にスタッフの接遇向上にも力を入れましょう。

整形外科では慢性疾患の患者さんや高齢の方との接点が多く、スタッフの人柄や接遇が評価される場面も少なくありません。受付や看護師が笑顔で丁寧に対応してくれる、医師がじっくり話を聞いて病状説明してくれる、といった経験は患者さんの心に残ります。

このように患者さん視点に立ったサービス向上策を積み重ねることで、「ここに来れば安心できる」と思っていただけるクリニックを目指すことができます。患者満足度の高さは経営の安定にも直結するため、常に改善を続ける姿勢が重要です。

整形外科を開業するまでのスケジュールと全体の流れ

整形外科を開業するまでのスケジュールと全体の流れ

実際に整形外科クリニックを開業するには、長期にわたる準備期間と多岐にわたる手順が必要です。ここでは開業までの一般的な流れとスケジュール感、必要資金や専門家の活用について解説します。

整形外科開業の流れ

初めてクリニックを開業する場合、最低でも1年以上前から準備を始めるのがよいでしょう。以下に開業までの主な流れを示します。

  1. 診療コンセプトの明確化と事業計画の策定
  2. 開業形態と開業地の選定
  3. 資金調達
  4. 内装工事・医療機器の手配
  5. スタッフ採用・教育
  6. 各種届出・申請手続き
  7. 広告宣伝・集患対策
  8. 開業当日・運営開始

以上が整形外科クリニック開業までの大まかな流れです。余裕を持ったスケジュールで着実に準備を進めれば、開業後のスタートダッシュもうまく切れるでしょう。

整形外科開業に必要な資金と資金調達の方法

整形外科の開業には、設備資金と運転資金を合わせて1億円を超える資金が必要な場合があります。

特に、X線装置などの医療機器導入費が高額になりがちで、MRIなどを導入するとさらに費用が膨らみます。そのため、何に投資すべきか優先順位の見極めが重要です。

資金調達は、自己資金に加え、日本政策金融公庫や福祉医療機構などの公的融資や民間銀行のローンが中心です。公的融資は低金利で長期融資が可能ですが、事業計画書など事前の準備が肝心です。

開業コンサルや医療機器メーカー、税理士など専門職の活用方法

整形外科クリニックの開業準備には、専門知識を持つ各種専門家のサポートを受けるとよいでしょう。

開業コンサルタントは、事業計画策定から物件探し、内装・医療機器選定、スタッフ採用、広告宣伝まで幅広く支援します。医療機器メーカーは、機器提供に加え、レイアウト設計や放射線防護工事の提案も行い、開業セミナーや支援ネットワークを持つ場合も多いため、複数社比較検討やセット購入による値引き交渉が重要です。

税理士や会計士は、法人化相談、節税対策、青色申告、経理体制構築などで必須の連携相手です。スタッフの人数が多い場合や就業規則や給与規定などの人事関係の規定の作成を社会保険労務士に依頼しておくとよいでしょう。

これらに加え、内装設計士、不動産業者、広告代理店など、多様なプロと連携し、専門業務を任せることで、医師は医療とクリニックのマネジメントに集中できる環境を整えることが肝要です。

まとめ

まとめ

整形外科クリニックの開業は準備が多く難易度が高いですが、計画的にポイントを押さえれば、需要の高い分野で安定した経営が可能です。高齢化社会において、地域に必要な存在として大きな意義があります。

基本に立ち返り丁寧に準備すれば、地域に愛されるクリニックを築けるでしょう。