TOP > 電子カルテ・ICT・医療機器・精算機 > クリニック開業時に導入すべきDXツールや業務効率化に貢献するツールを解説

クリニック開業時に導入すべきDXツールや業務効率化に貢献するツールを解説

                   
投稿日: 2025.09.05
更新日:2025.11.13
                   

医療業界では人材不足が加速し、限られたスタッフで高品質な医療を提供するための工夫が求められています。

その解決策の一つが、医療DXです。クリニック開業時に導入すれば、業務効率化と患者満足度向上を同時に実現できるでしょう。今回の記事では、クリニック開業時に導入すべきDXツールについて、詳しく解説します。

【医療DX】推進体制や現在の状況とは

【医療DX】推進体制や現在の状況とは

DX(Digital Transformation;デジタルトランスフォーメーション)とは、ICT(Information and Communication Technology)をうまく取り入れることで、人々の生活をよりよい方向に変化させることを指しています。

医療DXとは、デジタル技術で医療の仕組みやサービスを変え、患者さんの満足度を向上させると同時に医療の質を高めることを意味しています。

ここでは、現在クリニック経営が直面している課題や、その解決策としての医療DXについて解説します。

参照:『令和4年版 情報通信白書』(総務省)

クリニック経営における課題

日本は少子高齢化の進行によって、今後は生産年齢人口(15〜64歳)を中心に減少していくと予想されています。一方で85歳以上の方を中心とした高齢の方の人口は、2040年頃がピークとなるような増加が見込まれています。

生産年齢人口の減少に伴って医療従事者の確保が難しくなっていくことが想定され、クリニックの経営にとっても、少ない医療従事者でも円滑に業務を進めるための方策が課題となります。そのため、働き方改革などによる労働環境の改善に加え、医療DXの推進がますます重要になると考えられます。

参照:『第114回社会保障審議会医療部会 資料』(厚生労働省)

政府が推進する医療DXの概要

医療DXは、医療や介護のあらゆる段階で生まれる情報やデータをクラウドなどの共通基盤でつないで共有化、標準化しようとする取り組みです。

予防から受診、診療、治療までの一連の流れや、薬の処方、診断書作成、診療報酬請求、介護や地域医療との連携、研究開発までに関するものまで幅広く手がけられていく予定です。

超高齢社会を迎える日本では、健康寿命を伸ばすことと社会保障制度を持続していくことが重要課題です。

国民が必要なときに必要な医療やケアを途切れることなく受けるためには、人材やシステムなどの限られた資源を有効活用できる体制を整える必要があります。そのために、医療DXによる業務効率化が求められているのです。

さらに、医療情報を研究や開発にも活かせる環境が整うことで、将来の医療の発展が期待されています。

クリニックにおける各種デジタルツールの普及率

医療DXに関する取り組みとして、診療所(クリニック)でも各種デジタルツールの導入が進みつつあります。

ツール名普及率
レセプトコンピュータ97.6%
オンライン資格確認92%(2024年)
標準型電子カルテシステム55%(2023年)
乳幼児予防接種のデジタル予診票(千葉県市原市)医療機関:約40%、利用者:約80%

特に普及率が高いツールは、レセプトコンピュータオンライン資格確認です。レセプトコンピュータの普及率は97.6%であり、ほとんどの医療機関がレセコンを導入していることになります。

標準型電子カルテシステムとは、全国医療情報プラットフォームなどと連携して情報共有ができ、さらに民間システムとも組み合わせて業務効率化を図れる仕組みです。2023年時点の普及率は55%で、今後さらに導入が進む見込みです。

参照:『医療 DX を適切に推進するための医師会の役割』(日本医師会 医療IT委員会)

参照:『オンライン資格確認の都道府県別導入状況について』(厚生労働省)

参照:『第3回標準型電子カルテ検討ワーキンググループ資料』(厚生労働省)

参照:『母子保健情報のデジタル化に向けた現状と課題 第5回 母子健康手帳、母子保健情報等に関する検討会』(厚生労働省

【クリニック開業】導入すべきツール

【クリニック開業】導入すべきツール

医療DXが推進されるなか、クリニックを開業する際にはいくつか導入すべきツールがあります。ここでは、代表的なものを解説します。

レセコン

レセコン(レセプトコンピューター)は診療報酬の計算やレセプト作成を自動化するシステムで、電子カルテの機能としてレセコン機能が組み込まれている製品もあります。

診療内容を入力するだけで点数計算から請求書作成まで一貫して処理できるため、事務作業の効率化に貢献します。レセプトの誤りを減らし、返戻や査定リスクを下げられる点もメリットです。人手不足が課題となる医療現場ではスタッフの負担軽減と正確な会計処理の両立が課題なので、クリニックの円滑な運営のためにも開業時に導入すべきツールといえるでしょう。

電子カルテ

従来は紙に記載していたカルテ情報を、パソコンやモバイル端末で入力管理できるシステムが電子カルテです。患者さんの生年月日や住所などの基本情報、病名、症状、今まで受けてきた治療の内容や診察日などの情報をデータベース化し、デジタルで一元管理できます。診療履歴や検査結果を瞬時に確認でき、過去データとの比較も容易になるため診断の質を高めるためにも役立ちます。

予約や会計システムと連携させれば、受付から診察、会計までの流れをスムーズにでき、待ち時間の短縮にもつながります。

カルテ庫からの出し入れ作業や保管スペースが不要となり、情報共有の効率化やセキュリティ強化にも有効です。開業時から導入しておくことで、診療の質と運営の効率性アップが期待できます。

また、国が掲げる医療DX推進の目標の一つに、医療機関を必要とするすべての患者さんの医療情報の共有があり、電子カルテの導入はこの目標達成の一助になると考えられます。そのため、導入を検討する際は標準規格に準拠した電子カルテ(標準型電子カルテ)を検討するとよいでしょう。

オンライン資格確認

オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップもしくは健康保険証の番号などによって、オンライン上で患者さんの保険資格情報を即時に確認できる仕組みです。従来の保険証の目視確認や入力作業に比べて手間が少なく、資格の有効性も瞬時にチェックできるため、入力ミスや資格過誤による返戻を防げます。

また、マイナンバーカードを活用することで、診療情報や薬剤情報の閲覧も可能になり、より正確で安全な診療につなげられます。

国が導入を推進しているため、開業時に整備しておくことで今後の制度変更にも柔軟に対応できる点が大きなメリットです。

【クリニック開業】業務効率がアップするツール

【クリニック開業】業務効率がアップするツール

業務効率を向上させるためのツールには、以下のようなものがあります。

Web予約システム

Web予約システムは、患者さんがインターネット上から、24時間いつでも予約や空き状況の確認ができるシステムです。

クリニックのホームページやSNSなどに予約受付ページを作成する方法や、業種別の検索サイトや予約サイトに登録する方法があります。

電話対応の負担を軽減できるうえ、診療時間外の予約受付も可能になるため機会損失の防止につながり、患者さんの利便性も向上します。受付業務の効率化で、受付業務に関わるスタッフの人件費抑制などの効果が期待できます。

Web問診システム

Web問診システムは、患者さんが自分のスマートフォンやタブレット、パソコンなどからWeb上で問診票を入力できるサービスのことです。

導入によって、患者さんは当日の問診票記入の手間を省くことができるため、待ち時間削減が期待できます。クリニック側は事前に症状を把握してスムーズな診療のために役立てたり、入力内容を電子カルテと連携して事務作業の負担軽減につなげたりすることができます。

呼び出しシステム

クリニックでの患者さんへのサービス向上と、患者さんならびにスタッフの負担軽減のため、呼び出しシステムの導入も効果的と考えられます。

患者さん呼び出しシステムは、診療時間が近づくと受付時に受け取る専用の呼出機やメールなどで通知できるシステムです。待合室での混雑緩和と感染症対策にも有効で、スタッフが一人ひとりの呼び出しを行う手間も減り、業務の効率化につながります。プライバシーに配慮できる点も、患者さんの満足度向上に貢献します。

自動精算機やセルフレジなど

自動精算機やセルフレジは、会計業務を効率化するツールです。患者さん自身が会計を行えるため受付スタッフの負担を軽減でき、釣り銭間違いや待ち時間の削減、院内オペレーションの効率化、患者さんの満足度向上が期待できます。

キャッシュレス決済端末

キャッシュレス決済端末を導入すると、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済などさまざまな支払い方法に対応できます。患者さんの利便性が高まるだけでなく、現金管理のリスクも軽減できるのが特徴です。

会計のスピードアップやスタッフの負担削減にも効果的で、近年は医療機関でも導入が進んでいます。

デジタルサイネージ

デジタルサイネージとは、屋外や店頭、交通機関など、一般家庭以外の場所でディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するものです。

クリニックでの活用方法の例として、待合室のモニターで診療案内や健康情報を表示する、医師の診察予定日などを公表するといった方法があります。

紙のポスターよりも情報更新が容易で、季節ごとの予防接種や休診日などのお知らせも反映しやすく、視覚的にわかりやすく伝えられるのがメリットです。待ち時間を有効活用でき、患者さんへの啓発や信頼感の向上にもつながります。

電子処方箋対応システム

電子処方箋対応システムは、処方内容を電子的に管理し、薬局とスムーズに共有できる仕組みです。

電子処方箋の導入により、薬歴管理の精度向上や重複投薬防止など医療の質の向上につながります。国の推進する医療DXにも対応できるため、今後ますます重要になるシステムといえます。

【クリニック開業】DXツール導入時の注意点

【クリニック開業】DXツール導入時の注意点

クリニック開業に際してDXツールを導入する際には、以下のような点に注意しましょう。

開業予算の範囲内におさめるようにする

各DXツール導入には多額の資金が必要となるケースもあるため、開業予算の範囲内で収めるように気をつけましょう。

開業時は医療機器や内装など多くの費用が重なるため、優先順位をつけて導入計画を立てることが大切です。今すぐ必要なものと将来的に導入してもよいものに分け、予算内で無理なく導入することで、経営の安定性を保ちながら効率化を実現できます。

DXツール導入に際しては、融資や補助金を受けられる場合もあります。導入を検討しているツールで利用できる融資や補助金がないか、調べてみるのもおすすめです。

各システム間での連携を確認する

導入しようとしているシステムがほかのシステムと連携できるかどうかも大切なポイントです。

レセコン・電子カルテ・オンライン資格確認など複数のシステムを導入する場合、それぞれがスムーズに連携できるかをしっかり確認しましょう。システムの相性が悪いと二重入力などの手間が発生し、かえって業務が煩雑になる可能性があります。

導入前にベンダーに確認し、トラブルが生じた際のサポート体制もチェックしておくのがおすすめです。

導入前研修やマニュアルの整備を実施する

便利なシステムも、使うスタッフが不慣れでは十分に活用できません。システムを導入する前に、スタッフの研修やマニュアルの整備を充実させておきましょう。

特に電子カルテやWeb予約システムは患者さん対応に直結するため、習熟度に差が出ないよう、フォロー体制を整えることも大切です。

デジタルツールに必要なコストを把握しておく

デジタルツールは、初期費用だけでなく月額利用料や保守管理費、アップデート費用など継続的なコストがかかります。無理のない範囲で予算を組み、長期的な視点で費用を試算してクリニックの収益構造に見合ったツールを選びましょう。

まとめ

まとめ

医療DXは、クリニック側の業務効率化だけでなく、患者さんへのサービス向上にもつながります。開業時から導入すれば日々の運営がスムーズになり、スタッフの負担も軽減できるでしょう。

オンライン資格確認や電子カルテなどは、今後ますます普及が進む分野です。無理のない範囲で導入を検討し、よりよいクリニックづくりを目指してみてください。