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病院の支払いは現金のみが多いのはなぜ?その理由とキャッシュレス決済導入支援制度について解説

                   
投稿日: 2024.12.19
                   

病院でのキャッシュレス決済は業務の効率化や患者さんの利便性向上につながると期待されている一方、普及率は他業種に比べ低い状況にあります。

本記事では、支払い方法が現金のみの病院が多い理由や、キャッシュレス決済導入に関する支援制度について詳しく解説します。

病院の支払い方法について

まずは病院の支払い方法について、日本のキャッシュレス普及率や海外の現状を紹介します。

病院の支払い方法が現金のみの病院の割合はどのくらいですか?

2019年に行われた公益社団法人 日本医師会の「医療機関におけるキャッシュレス決済に関するアンケート結果概要について」によると、キャッシュレス決済を導入していないと回答した医療機関は全体の87%におよびます。

(参考:医療機関におけるキャッシュレス決済に関するアンケート結果概要について|公益社団法人 日本医師会
この調査結果から、支払い方法が現金のみである医療機関がいまだに多く、キャッシュレス決済の導入が進んでいないことがわかります。

病院の支払い方法でキャッシュレス決済はどの程度普及していますか?

2021年に行われた厚生労働省の調査によると、キャッシュレス決済のなかでもクレジットカード(デビットカード含む)決済を導入している医療機関は57.4%でした。

一方で、QRコードを利用した決済の導入率は3.7%、交通系ICカードなどその他の電子マネーの導入率は4.7%と一桁台が目立ちます。

(参考:医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査結果報告書|厚生労働省

2021年に経済産業省が発表したキャッシュレス決済導入に関する調査によると、全業種におけるキャッシュレス導入率は72%でした。飲食業では85.4%、食品業では78.8%と高い割合で導入されています。これらと比較すると、医療機関でのキャッシュレス決済は普及が進んでいない状況が読み取れます。

(参考:キャッシュレス決済実態調査アンケート集計結果|経済産業省

海外の病院でのキャッシュレス決済はどのくらい普及していますか?

2020年「キャッシュレス決済の利用シーン拡大に向けた調査事業報告書」の「諸外国における医療機関のキャッシュレスの状況」の報告によると、アメリカや韓国など多くの国では、患者さんのほとんどが病院でクレジットカード、もしくはデビットカードを使って支払いを行っている傾向にあります。

また、クレジットカードに限らずQRコードなど、さまざまなキャッシュレス決済を取り扱っているようです。現金で支払う機会もありますが、高額ではなく少額のケースが多いようです。

病院でキャッシュレス決済が普及しない理由

病院でキャッシュレス決済が普及しない理由

なぜ日本では病院でキャッシュレス決済がなかなか普及しないのでしょうか。ここからは、病院でキャッシュレス決済が普及しない理由を解説します。

病院の支払いは現金のみが多いのはなぜですか? 

病院の支払いで現金のみが多い理由には、以下の点があげられます。

  • 入金までに時間がかかる
  • 手数料がかかる
  • 端末の導入費用がかかる
  • 端末のランニングコストの問題

現金払いの場合は、支払いと同時に入金が完了するため時間差が生じません。一方、キャッシュレス決済の場合、一定期間の支払いがまとめて後日入金される仕組みのため、入金までに時間がかかることが1つ目の理由です。病院の経営状況によっては、資金繰りの面で支障をきたす可能性もあるでしょう。

また、キャッシュレス決済ではクレジットカード会社や電子マネー会社に支払う決済手数料が発生します。

一般的に決算手数料は支払い金額の2〜3%程度ですが、手数料が負担となって経営を圧迫する可能性があります。コストカットのために現金払いを選択する病院も少なくないでしょう。
さらに、キャッシュレス決済を導入するためには、手数料だけでなく端末の導入費用や月額利用料、データ管理費などのランニングコストがかかります。 端末の種類や販売会社の価格設定によって異なりますが、端末の導入費用は 5千〜5万円程度が目安です。端末の性能によっては数十万円というものもあります。 ランニングコストを削減したい病院であれば、キャッシュレス決済の導入を見送る選択をすることもあるでしょう。

病院でキャッシュレス決済を導入する際の懸念点を教えてください。

病院でキャッシュレス決済を検討する場合、患者さんからのニーズの有無やシニア層の操作への不安、業務の見直しの手間などが懸念点として考えられます。

まず、キャッシュレス決済を導入する前に、自院の主な利用層からどのような決済方法の需要があるのか、ニーズを確認することが重要です。例えば、高齢の患者さんが多い病院では、キャッシュレス決済を利用したいというニーズは少ないかもしれません。

反対に若い人の割合が多い病院の場合、様々あるキャッシュレス決済のなかでもどのような決済方法のニーズが高いのかを調査する必要があるでしょう。

ニーズを把握せずにキャッシュレス化を進めた結果、患者さんの精神的な負担やスタッフの業務が増してしまっては導入効果が薄まってしまいます。

支払い待ちの時間短縮や感染症のリスク軽減など、メリットも提示したうえで、患者さんのニーズがあるのかを把握しておきましょう。

また、病院を利用する方の平均年齢は57歳以上で、70〜79歳の割合が最も多くなっています。消費者庁が2020年11月に実施した「消費者意識基本調査」では、70歳以上の59.9%がキャッシュレス決済を使っていない、または知らないと回答しています。

決済端末やスマートフォンの操作に不慣れな方もいるため、キャッシュレス決済に抵抗を感じる方は少なくないでしょう。シニア層のフォローをどのようにするか、人員配置やオペレーションを検討しておく必要があります。

さらに、キャッシュレス決済を導入する場合、スタッフは新しい端末やシステムの操作方法を覚えなければならず、通常業務以外に学習する時間を確保しなければなりません。
操作に慣れれば現金のやり取りより時間を短縮できるかもしれませんが、従来の業務を見直すには時間がかかり、対応できないスタッフも出てくる可能性があります。導入前の研修会や操作のマニュアル整備でスタッフが混乱しないよう事前に準備を整えるなど、業務の見直しを迫られる点も懸念点といえます。

病院のキャッシュレス決済導入支援制度

病院のキャッシュレス決済導入支援制度

キャッシュレス決済の導入でコスト面に不安がある場合、さまざまな支援制度を活用する方法があります。ここでは、病院のキャッシュレス決済導入のために利用できる支援制度を紹介します。

キャッシュレス決済サービスの導入で「IT導入補助金」が利用可能な場合もありますか?

「IT導入補助金」は、キャッシュレス決済サービスの導入で利用可能な場合があります。

「IT導入補助金」とは、事業効率化や業務改善のためにITツールを導入する中小企業や小規模事業所を支援する制度です。キャッシュレス決済に関しても、対象となるシステムやサービスを導入する場合に補助金を申請できるケースがあります。

IT導入補助金には通常枠とインボイス枠、セキュリティ対策推進枠があり、キャッシュレス決済導入に使えるのはインボイス枠です。インボイス制度に対応した会計・受発注・決済の機能を持つITツールおよびハードウェアの導入に対する補助を受けられます。

IT導入補助金の対象となるキャッシュレス決済の種類は以下のとおりです。

  • クレジットカード決済
  • デビッドカード決済
  • PayPay、楽天ペイなどのQRコード決済
  • Suica、PASMO、WAONなどの電子マネー決済

ただし、端末機によってはQRコードや電子マネーに対応していない機種もあるため、導入したい決済サービスに合わせた端末機の選定が必要となります。

自治体の支援制度はありますか?

一部の自治体ではクレジットカードの決済手数料を負担する支援制度があります。病院や患者さんの手数料の負担はなく、自治体が負担する形となっています。これは、キャッシュレス決済ができる病院の普及を促進する目的で、一部の自治体が手数料を負担するIT導入を支援する制度です。

決済事業者の支援制度はありますか?

オンライン診療やオンラインでの服薬指導における支払いに対する手数料を、決済事業者が負担する場合もあります。

支援を受けられる期間などは決済事業者によって決められているので、導入を検討している決済事業者に支援制度がないか調べてみるとよいでしょう。

日本医師会の支援制度について教えてください

日本医師会のORCA管理機構では、日本医師会の会員限定で低手数料率でのキャッシュレスサービスの取り組みを行っています。クレジットカードの端末費用や導入費用および月額の利用料を無料とし、決済手数料も低手数料率となっています。詳しい手数料率に関しては、日本医師会の会員限定メンバーズルームの「医師会活動について」を確認してみてください。

編集部まとめ

支払い方法が現金のみである病院が多い理由、キャッシュレス決済導入に関する支援制度などを解説してきました。

全業種におけるキャッシュレス導入率は増加傾向です。特に飲食業は85.4%、食品業は78.8%と高い割合で導入されている一方、病院の導入率はとても低いといえます。

病院でキャッシュレス決済が普及しない理由としてコストや運用上の課題はありますが、各種の支援制度を活用することで導入にかかる負担の軽減が可能です。

キャッシュレス決済の導入にはコストがかかりますが、サービスや業務の効率化、患者さんの利便性の向上など、長期的に考えると多くのメリットもあります。

キャッシュレス決済の導入を検討する際は、利用する患者さんのニーズの有無や業務への一時的な負担増などを考慮して、支援制度の利用も検討してみてはいかがでしょうか。